1987 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける教育改革と80年代のドイツ語-日本のドイツ語教育のための言語史的研究
Project/Area Number |
62510262
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉島 茂 東京大学, 教養学部, 助教授 (50011309)
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Keywords | 文法 / 文学 / 批判 / 教育 |
Research Abstract |
ドイツ語教育の日本柱である文法と文学の教育に焦点を絞って調査した. 1.文法:第二次世界大戦後も, いわゆる伝統文法に基づいた教育が行われていたが, それは正書法, 標準発音, 規範文法に重点をおいたものであった. 60年代に入って, Weisgerberらの意味内容文法の影響をうけた教育が多く行われた. 具体的な教授法にはこれといったものは見られないが, その相対主義的言語世界観は看過すことはできない. 70年代にはアメリカから伝えられたGenerative Grammatikの学校版(TSG)やフランス系の依存文法が文法教育に影響を与えた. これらの文法は高度に精密化した理論と方法に依拠したもので, その直接的な授業への導入はかえって言語・文法の理解を困難にし, 言語の運用訓練という目標とほど遠いものであったと反省されている. 70年代の言語学の実用論化にともいな, 文法教科書も話し手のIntentionを教科書の構成原理とするものが現われ, 現在に至っている. 2.文学:戦後のドイツ語の授業はここでも, ナチズムからの訣別から始まった. 古典的人文主義による絶対主義の克服も, 教材とすべき作品に対する選定原則がなく, 「現実の不可思議」な面を強調するだけに終っている. 70年代には文学の定義が見直され, 広く広告文や大衆文学も教材として取り上げられるようになった. 平行してマルクス主義的立場から文学による批判的態度の育成を目的とした教科書も現れたが, これは学習者に興味, readinessを無視した点が多く, 上からの批判的文学受容の押付けであると指摘されている. 現在では学習者の文学受容の欲求をも考慮した教科書・カリキュラム作りが行われている. さらに批判的文学受容を学習するのみならず, 学習者が授業中教師に対して, 批判的質問を行いうること自体が授業の目的であるとされている.
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