1987 Fiscal Year Annual Research Report
ソビエト法における「ロシア的なるもの」の社会史的分析
Project/Area Number |
62520002
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大江 泰一郎 静岡大学, 人文学部, 教授 (00097221)
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Keywords | ソビエト法 / ロシア / 社会史 / P・ミリュコーク(P・Milyukov) / スターリン憲法 / 法文化 / 社会主義法 |
Research Abstract |
研究初年度の作業として資料収集に力を注いだが, これと平行して行った研究作業の結果として以下の成果をうることができた. 1 研究史的な面では, 現代ドイツの「社会史」派とりわけオットー・ブルンナーらの「構造史」派の仕事と, 革命前ロシアの「国家学派」(とくにミリュコーフ)の仕事を比較検討することにより, 前者のロシア社会史認識に後者が大きく寄与していることを知り, これら両者の方法の有効性を確認しえた. 2 本科研費交付以前から着手していたものではあるが, ソビエト法における「ロシア的なるもの」に着目しつつソビエト憲法史を再検討する作業として, 論文「社会主義憲法史序説」(組上り71頁, 近刊)を執筆した. 1930年代のいわゆる「大粛清」などのスターリン現象は従来しばしば「世界で最も民主的な憲法」といわれる1936年ソ連憲法からの「逸脱」と解釈されてきたが, この論文において執筆者は, スターリン現象と憲法とは表裏をなすものであって, かかる現象はその社会的基礎から見て革命前ロシアの法ないし政治文化のある意味での復活と関連していること, を主張している. 3 以上の作業によって得た新しい視角から学界に対し, 現代中国法を含む社会主義法研究について, 「アジア的なるもの」の分析に関する方法論的提言を行いつつある. この提言の趣旨は, 資本主義法とは異なる歴史的法類型としての社会主義法は, 現存社会主義諸国の法を念頭に置くかぎり, 単に資本主義法一般と区別されるだけでなく, いわば比較文化史的観点からアングロサクソン法や大陸法と区別される一個の独自類型をなしており, そこでの「アジア的なもの」(ウェーバーのいう意味での「レグルマン」的法観念に連なる要素)を無視することができない, というものである.
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Research Products
(2 results)