1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62520005
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
笹倉 秀夫 大阪市立大学, 法学部, 助教授 (10009839)
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Keywords | civic humanism / マキャベリアン・モーメント / イギリス古典派経済学 |
Research Abstract |
本研究は, イギリス近代の社会思想においてcivic humarismと古典経済学思想との2つの自由観念が相互にいたある緊張関係と相補性をもっているかを折出し考察を加えることを目的とする. 2年にわたる研究計画に沿い, 62年度はハリントンからギボンに至る政治思想の分析に重点を置いて来た. その結果, (1)Civic humanismの自由は古典経済学的自由に比して従来あまり注目されてこなかったが, これがイギリス近代思想のみならば, ルソーやアメリカ独立運動史, さらにはヘーケルや近代ドイツ法史の思想を解くためにも1つの重要な鍵になることがまず確認しえた. (2)また, 本年は, さらにハリントンにおけるcivic humanismがマキャベリ継受の形ではじまったことから, このマキヤベリにおける自由の観念がそもそもいかなるものであったかについても重点的に取り組み, 新たなマキャベリ論への地歩を固めることができた. (いわゆるマキャベリアン・モーメントの源流の考察) すなわち, これまでマキャベリは, しばしば近代政治学の創始者として, 古典的伝統, civic humanismとの対立において考えられて来た. しかしこれは「君主論」を中心にしたそれの一面的な解釈によるものである. だが, マキャベリの作品を全体にわたって検討しまたルネッサンスの歴史的コンテクストの中で考えると, 実はマシャベリの思想と思考には, civic humanismの方向がきわめて強く, また, いわゆる「政治の発見」もけっして性悪説から来るものではなく, 別種の動態的なものの見方によることが明らかになった. こうした成果に立って本年度から来年度前半とかけては, このマキャベリ〓〓について一つのまとめを行なうことが可能になり, またそのまとめを踏まえて, ハサントンからキボシに至るイギリスcivic humanismの伝統との対比においてイギリス近代(古典)経済学の社会思想の歴史的肉付けが可能ともなった.
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