1988 Fiscal Year Annual Research Report
協同組合の法的研究-その法的実態と解釈論的アプローチ-
Project/Area Number |
62520022
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
志村 治美 立命館大学, 法学部, 教授 (70066603)
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Keywords | 生活協同組合 / 農業協同組合 / 漁業協同組合および中小企業協同組合の事業目的 / 員外利用と取引の安全 |
Research Abstract |
昭和63年度は、協同組合に関する判例を中心に全面的な解釈論的アプローチを志向して来たが、この作業は、現在進行中の、私が共著者として参加している上柳克郎著『協同組合法』(法律学全集)の全面的改訂作業の中に活かされることになる。したがって、さしあたり本年度の成果は、近く発刊される「立命館法学」(203号)に掲載予定である総合判例研究をもって、これに代えたいと思う。その内容は次のとおり。 法人の目的による能力制限規定たる民法43条が、会社法改正の下で廃棄されようとされている現在、協同組合のある行為が、当該組合の事業目的の範囲内にあるか否かを検討することは、これとの対比において意味のあることである。もちろん、法人の目的たる事業の範囲の内外につき、会社に関する判例の対象と協同組合のそれとは、ほぼ同性質のものもあるが、協同組合では、いわゆる員外利用という会社判例に存在しない問題も相当多い。しかも、両法人とも法人の目的外の行為を為した場合の、取引の安全に対する配慮は等しく要請される。かくて、判例は協同組合特有のいわゆる員外利用の場合にも範囲内の行為と解し、有効と判示し、会社法・協同組合一般に認められる範囲の拡大と軌を一にしている。 この様に判例の動向を整理するとき、会社法改正作業とかかわって、将来、協同組合法における目的の範囲外の行為に関する規定をどの様に改正するかが課題となること。特に、大規模生協に対するいわゆる員外利用規制が他の中小企業より声高に叫ばれている現在、取引の安全保護の視点が重要とならざるを得ないこと。さらには、事前の予防規制はともかくとして、事後的処理については、判例の傾向によるべきであり、法改正においてもこの点への配慮が肝要であること等を知見した。
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Research Products
(1 results)