1987 Fiscal Year Annual Research Report
言語の政治的機能-政治指導者の言語表現のなかにみられる「国際化」を中心に
Project/Area Number |
62520037
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
|
Keywords | 国際化 / 国際国家 / 国際 / 政治言語 / 言語 / 政治指導者 |
Research Abstract |
本研究では, 言語が単なる客観的事実を記述する中立的手段にすぎないという政治学主流の考え方を再検討し, その理論的限界を明らかにしようとした. その結論は次の3点に要約できる. 1)言語は, 政治的現実を記述するだけでなく, その現実を構成する. 2)言語は, 中立的手段ではなく, 価値観に強く影響されている. 3)政治指導者が用いる言語(言葉)の意味は確定されていない. 以上は政治指導者が使う「国際国家」, 「国際化」などの表現の分析を通じて導き出された. すなわち, 与党の指導者(例, 中曽根前首相)は「国際国家」という言葉を1983年ごろからよく使用するようになったが, それは主として欧米諸国の「仲間」として国際的に認めてもらうという意味での「国際国家」であり, 日本の国際的な地位の向上という政治的現実を構成するために用いられていた表現でると思われる. したがって, 与党にとっての「国際化」とは, 主としていわゆる「外なる国際化」である. しかし, 靖国神社問題や諮問押捺問題が端的に示しているように, 日本の国際化の問題は「内なる国際化」の問題を含んでいるのである. そこで野党の指導者(例, 上畑耕一郎)はアジアの問題をより「国際的」な観点から取り上げない限り日本が真の「国際国家」とならない, というように「内なる国際化」の必要性を訴え, 自民党政権を批判する. 言語は中立的手段ではないことはこれによって明らかである. そしてまた「国際化」をめぐる「外なる国際化」と「内なる国際化」との力点の置き方の違いをみれば, 政治指導者が用いる言語…この場合「国際化」…が一義的ではありえないことも明らかとなる. このように, 言語表現の政治的機能を指摘しえたかぎりにおいて, 本研究は政治学の理論的限界を示したものであると確信する.
|