Research Abstract |
本年度は, 本研究第一年目として, まず最近発表された論文, 近年発行された著書のサーベイ・検討を行なった. 次いで, これまでに作製されていた理論モデルの修正と発展をはかった. 具体的には, まず第一に, もとのモデルに労働者の離職行動を導入したり, 第二に, 今まで通り企業は危険中立的と仮定しながら, 労働者のみを危険回避的と仮定したり, 第三に, 解雇手当を導入し均衡への効果を調べたりした. その結果, 外生変数としての労働者の離職率が高まると, 終身雇用や条件付雇用のような, 労働力の内部化が相対的に生起しにくくなることが示された. これは, 特殊人的資本の蓄積が相対的に困難になるということと, 表裏一体の関係にある. また労働者の危険回避度が高まる程, 労働力の内部化が中間程度である条件付雇用が採用されにくくなり, 内部化が完全か, あるいは皆無かというような両極端になることを示すことができた. 特殊人的資本の蓄積も, 労働者が危険中立的である場合より少なくなる傾向がある. またこの仮定のもとでの均衡は, そのままでは最適でないことも証明できる. しかしながら, 特殊人的資本を蓄積した労働者には, 解雇に際して適当な水準の手当を支給すると仮定すると, 労働者が危険回避的でも, 危険中立的な時と同様な最適解を達成することができる. 因みに, 労働者が危険中立的なときは, 解雇手当は均衡の雇用形態に影響しないことが示される. 歯科 もとの論文はかなり複雑であったが, 修正発展された論文は, 生産物価格のとりうる値の数を最小限にしたので, かなりすっきりしたものになった. 実証研究は, 研究補助者の協力を得て, 現在進行中である.
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