1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62530021
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
荒井 一博 一橋大学, 経済学部, 助教授 (40134879)
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Keywords | 労働力の内部化 / 内部労働市場 / 年齢別賃金格差 / 年功賃金制度 / 雇用制度 / 雇用保障 / 賃金構造 |
Research Abstract |
本年度は理論と実証の研究をしたが、前年度の成果も雑誌に発表した。発表論文は、労働力が企業に内部化される条件と程度及び内部労働市場の年齢別賃金格差(以下格差)の決定を考察したものである。本年度の理論研究では、内部化にはバッファーとなる労働者が必要かを検討した。その結果、内部化要因が強く作用するときには、不要という結論を得た。実証では理論を受けて、卸・小売業、金融・保険業、建設業という主要な産業において、企業規模・主要学歴で分類した男子の格差が、理論と整合的であるかを、40年以降の時系列データで検討した。格差の特徴を、20歳代前半の賃金に対する40歳代の賃金の比率ととらえ、それを理論が示唆する労働力人口増加率、労働生産性増加率、高年齢期の生活費、勤続年数、景気指標の変数で説明可能かを分析した。労働力人口増加率の代理変数として労働者の年齢別構成比を使ったが、理論通りその増加率の上昇は格差を拡大するという結果を得た。労働生産性増加率の代理変数としては平均賃金の増加率を使ったが、よい代理変数でなかったので理論通りの結果が得られた場合は少なかった。高年齢期の生活費を特徴付ける変数として大学の学校納付金を選んだが、これは格差を拡大する、きわめて強い要因であることがわかった。近年制度的要因によって定年退職年齢が上昇しているが、高年齢期の生活費と関連した変数として、それも説明変数とした。そしてこれも理論通り格差を縮小させることが判明した。近年労働力の固定性が高まっているので、それに対応して、40歳代の平均勤続年数を説明変数に加えた。これは企業特殊訓練の量を表わす変数と解釈でき、従って格差を拡大する要因となるが、検定結果もその通りであった。最後に有効求人倍率を使って景気指標を表わす変数としたが、これは伝統的理論が指摘するように格差を縮小させることがわかった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Kazuhiro,Arai: Hitotsubashi Journal of Economics. 29. 201-217 (1988)
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[Publications] Kazuhiro,Arai: Hitotshbashi Journal of Economics. 30. (1989)
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[Publications] 荒井一博: 一橋論叢. 100. 775-793 (1988)
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[Publications] Kazuhiro,Arai: Hitotsubashi Journal of Econmics. 29. 21-35 (1988)