1988 Fiscal Year Annual Research Report
「技術革新」下中小企業における技術水準向上と競争力の強化ー技術水準と競争力の関係に関する実証的研究ー
Project/Area Number |
62530034
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
廣江 彰 札幌学院大学, 商学部, 助教授 (80181197)
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Keywords | 下請単価設定 / 専属取引 / 取引先分散化 / 自立化 / 技術水準 / 指し値 / 見積もり合わせ / 価格交渉力 |
Research Abstract |
本年度研究のひとつの結論は、中小企業、とりわけ下請中小企業の取引価格を規定する基本的条件が、市場における競争関係にあるとみなすことは困難である、ということである。研究代表者によるこれまでの中小企業理論の検討、また本研究における個別企業の聞取り調査から得られた諸結果、さらには類似調査の詳細な再検討結果などからは、むしろ「下請」という関係の特殊性が、下請中小企業の取引関係における価格設定を規定する基本的条件として想定される。いうまでもなく、下請関係が「専属取引」であるのか否かは、下請取引価格の設定をめぐる諸条件のひとつである、しかし、これまでの中小企業論の通説は取引先企業すなわち「親企業」に対する下請中小企業の依存度を、取引価格設定の条件としては過大視している。それゆえ、近年の中小企業理論が「専属取引」の逆のケースである複数「親企業」との取引、もしくは「取引先分散化」をもって、下請中小企業の「自立化」指標と看做するようになっているものと思われる。さらに、そうした「自立化」の要因、したがって「取引先分散化」を可能とする主要な条件として「技術水準」を捉える見解が、散見されるようになる。これらの諸点の検証が本年度研究の課題であった。企業聞取りを中心とする本研究結果からすれば、下請中小企業の生産技術水準の高低は、確かに「取引先分散化」を可能にする条件ではあっても、下請取引価格設定を規定する基本的条件にはなっていない。生産ME化による技術水準の著しい向上も、親企業の事実上の「指し値」を双方の「見積もり合わせ」へとシフトさせる要因ではない。つまり、「下請制」という市場における商品の価値実現にかかわる関係が、下請中小企業の「価格交渉力」を規定していることである。下請取引関係が形成される技術的契機の解明や、あるいは逆に、中小企業の技術水準向上が「下請制」を否定し得るのかの解明が残された課題である。
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