Research Abstract |
合同企業のケースから, 企業システム, 技術, 市場および企業戦略にもとづいて, (1)旧来の技術に依存し, 製品差別化が不可能で必要資本量が小さく, 単純企業のまま合同し, そののち垂直結合化した合同企業と, (2)大きな技術革新を経験し, 製品の差別化が可能で必要資本量が大きく, 統合化ののち合同を経験した企業という2つの類型を析出した. さらにこの類型から, 前者についてはプラントのパーセンテージ・エクェクトの大小によって, 後者については技術革新の性格(プロセス・イイーベージョンかフロダクト・イノベーションカ)によって, それぞれ2つの下位類型を析出した. この類型にもとづいて合同企業の資産額上位26社(1909年)について, 合同時の企業形態, 合同後の戦略, 企業類型・組織の型, 合同の成功と失敗, 金融機関との関係などに関して分析をおこなった. 4つの類型とこれらの問題とのあいだには一定の連関があるように考えられる. さらに, これらの合同企業について所有構造の変化, 経営者の性格の変化(専門経営者の登場の時期)について明らかにしようとしたが, 資料の制約のため若干のケースでしか事実をつかむことができなかった. また, 合同がおこったほとんどすべての産業において1930年代までに寡占体制が成立したことが明らかになった. いずれにしても, 次年度(1988年度)は分析の対象となる合同企業のサンプル数を増やして研究をつめてみなければならない. なお, 今年度は製造業, 製造企業に関する産業史, 社史, 伝記, 財務資料, 経営資料などの文献・資料のリストとその収集をおこない, 研究に必要なものはほぼ収集できたと思われる. 歴史理論のサーヴェイは, 近代化論, 市民社会論, 世界システム論を中心におこなった.
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