Research Abstract |
この研究の目的は, 多層膜分光素子を使って, 従来の結晶を使った分光器に比べて, 効率のよい分光器を開発研究することである. 特に, 宇宙X線源の研究に重要な, 鉄のK輝線(6.4〜6.9keV)を観測できるものを目指している. まず, 多層膜を利用することにより初めて製作できる, X線用エタロンを想定し, 計算機シミュレーションから, 多数のエタロンを使用することにより, フーリエ分光器を製作できることが解った. それにより, 従来の結晶による分光器に比べて, 数十倍の効率を持つ分光器が作成できることも解った. 次に, 実際に, 阪大にある電子ビーム蒸着槽を用いて, Ni/Cによるエタロンを試作し, CuK特性X線(80keV), 及びAlK特性X線(1.5keV)で, 反射特性を評価した. その結果, ほぼ計算に近い反射特性が得られており, X線用エタロンとして, 充分に使用できることを確認した. また, エタロンで反射させたX線を検出するための位置検出型比例計数管を作成し, その特性を評価した. その結果, 約20cmの長さのX線検出領域に渡って, MnK特性X線(5.9keV)で, 約18%のエネルギー分解能と, 約1mm以下の位置分解能が得られ, フーリエ分光器の検出器として, 充分な性能であることを確認した. 63年度は, 実際にフーリエ分光器として必要な, エタロンを作成し, 既に完成している位置検出型比例計数管と粗み合わせて, 分光器としての特性を評価する.
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