1988 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー短寿命核ビームを用いた天体熱核反応の研究
Project/Area Number |
62540206
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下田 正 大阪大学, 教養部, 助手 (70135656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板橋 隆久 大阪大学, 核物理研究センター, 講師 (20112071)
高橋 憲明 大阪大学, 教養部, 教授 (10028152)
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Keywords | 液体ヘリウム中でのイオンの閉じ込め / 長い閉じ込め時間 / 短寿命核ビームのためのイオン源 / 小さなビームエミッタンス / 短寿命核による天体熱核反応 |
Research Abstract |
われわれは、短寿命核ビームを効率よく生成するためのイオン源(核反応で生成された短寿命核をイオンの状態で閉じ込め、引出し・加速を行う)として、液体ヘリウムを利用することを検討してきた。液体ヘリウムに注入されたイオンは、誘電分極によってそのまわりに引き寄せられた多くのヘリウム原子の「殼」の中でイオンとして長時間存在できる可能性がある。 昨年度には、この可能性を検討するために液体ヘリウム・デュワーを製作しその性能試験を行った。今年度は、阪大核物理研究センターのサイクロトロンからの90MeVの^<14>Nビームを液体ヘリウムに打ち込みイオンとしての残存率を測定した。ビーム・パルスに相関したパルス状の電場によってイオンを制御し、以下の結論を得た。 (1)イオン残存率はイオンの周りの電子密度に大きく依存している。入射イオンのエネルギーを下げ、強い電場をかけることで、イオン残存率を高められるであろう。 (2)イオンの寿命は700ミリ秒程度にも達しており、液体ヘリウムを用いるというこの方法によって、理想的なイオン源を構成しうる。 (3)イオンの易動度は、液体ヘリウムの温度が下がるにつれて大きくなりイオンの早い制御が可能になる。 (4)しかし、超流動状態ではイオンが摩擦を受けないので、電場がなければイオン残存率が低下してしまう。 このように、イオン残存率に関しては、イオン源として応用できる可能性は十分に高い。今後、実用化をめざしてイオンの引出し効率を調べる予定である。
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[Publications] 下田正: 次期計画測定器研究会報告(大阪大学核物理研究センター). RCNPーPー88. 61-70 (1987)
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[Publications] 下田正: 次期計画ワークショップ報告(大阪大学核物理研究センター). RCNPーPー93. 153-160 (1987)
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[Publications] N.Takahashi;T.Shimoda;Y.Fujita;T.Matsukawa;N.Ikeda;D.J.Hinde: Proc.RIKEN-IN2P3 Symposium on Heavy-Ion Collision. 128-133 (1987)
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[Publications] 下田正: 大型ハドロン計画における核物理の魅力(東京大学原子核研究所). JHP・7. 143-147 (1988)
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[Publications] 下田正: "重イオンビーム物理(物理学最前線23)" 共立出版, 111-203 (1989)