1988 Fiscal Year Annual Research Report
ランタニド及びアクチニド化合物における重い電子状態の理論的研究
Project/Area Number |
62540258
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
立木 昌 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20028111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 三郎 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (60171485)
小山 富男 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30153696)
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Keywords | 重い電子系 / アンダーソン格子 / 近藤効果 / 状態密度 / スピンのゆらぎ / 酸化物高温超伝導体 |
Research Abstract |
稀土類化合物やアクチノイド化合物のf電子系は、通常局在電子という描像がきわめて良く成立することが知られている。しかし、Ce化合物やU化合物の中には、低温でこの描像が成立せず、温度の低下とともに重い電子状態と呼ばれる、きわめて大きな有効質量を持つフェルミ液体状態に移行するものが存在する。この重い電子状態の出現は、強結合電子多体系が低エネルギー領域で示す普遍的性質であり、その解明は固体物理学の基本的課題となっている。 我々はまず低エネルギー領域における重い電子系の1電子状態の解明をおこなった。重い電子状態の特徴は、フェルミ準位近傍に大きな有効質量を持つフェルミ粒子励起が存在することにあるが、我々はf電子のスピンのゆらぎによる繰り込み効果を考慮することにより、シャープな状態密度を持つフェルミオンバンドがフェルミ準位近傍に出現することを示した。また、温度の上昇とともに、このフェルミオンバンドの幅は広がり、共鳴準位に移り変わることを示した。この結果は実験で観測されている高温での不純物的近藤効果を良く説明するものである。次に我々の理論の正当性を調べる目的で重い電子系の動的帯磁率を計算し、中性子散乱の実験結果と比較検討した。また、我々の計算に用いられた近似の正当性を調べるために、不純物アンダーソンモデルを用いてその電子状態の計算をおこない近似の正当性を確認した。 酸化物高温超伝導体は重い電子系である、という認識が広まってきている。我々はこの立場に立って、酸化物高温超伝導体の研究も進め、これらの物質の超伝導の機構には、フォノンやスピンのゆらぎよりも電荷のゆらぎが重要であるという理論を提出した。又、この酸化物に含まれる銅の核緩和時間の異常な温度変化は、スピンのゆらぎと超伝導との相互作用により理解できることを示した。
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[Publications] T.Koyama: Phys.Rev.B. 36. 437-451 (1987)
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[Publications] T.Koyama: Jpn.J.Appl.Phys.26. Suppl.26. 473-474 (1987)
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[Publications] T.Koyama: Jpn.J.Appl.Phys.26. Suppl.26. 475-476 (1987)
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[Publications] M.Tachiki: Jpn.J.Appl.Phys.26. Suppl.26. 493-494 (1987)
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[Publications] M.Tachiki: Kagaku. 58. 359-368 (1987)
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[Publications] M.Tachiki: Physica C. 153-155. 239-240 (1988)
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[Publications] T.Koyama: Physica C. 153-155. 1317-1318 (1988)
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[Publications] M.Tachiki: Phys.Rev.B. 38. 218-224 (1988)
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[Publications] M.Tachiki: Phys.Rev.B. 39. 293-299 (1989)
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[Publications] T.Koyama: Phys.Rev.B. 39. 2279-2292 (1989)
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[Publications] M.Tachiki: to be published in Solid State Communication.