1988 Fiscal Year Annual Research Report
重力場の理論における非線形問題の数理論的手法による研究
Project/Area Number |
62540279
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
冨松 彰 名古屋大学, 理学部, 教授 (10034612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 一洋 名古屋大学, 理学部, 助教授 (00115619)
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Keywords | 非可積分系 / アインシュタイン方程式 / ソリトンの摂動 / 非線形重力波 / ブラックホール |
Research Abstract |
前年度に引き続き、非線形問題に対する数理論的手法の開発及び重力場の方程式への応用の両課題について並行して研究を進めていった。 1.2-ソリトン系での散逸摂動:非線形シュレーディンガー方程式の2-ソリトンに対する線形散逸摂動の効果を調べた。非線形分散摂動の場合と違って、2つのソリトンの衝突が繰り返された後に、互いの振幅が等しくなり、2重極ソリトンに移行することによって束縛状態が解離することを示した。この結果は、今まで特異と見られていた2重極ソリトンが線形散逸というありふれた摂動を通じて2-ソリトンと結び付いていることを明らかにしたものである。また、非可積性の摂動の効果についてかなり一般的な理解が得られたので、数式的複雑さのために研究の遅れていた多ソリトン摂動理論の今後の発展が期待される。 2.非線形重力波のファラデー効果:重力波の非線形的伝播の特徴を知るために、円柱対称性を持つアインシュタイン方程式のソリトン波解を解析した。波の偏光状態に着目し、対称軸からの反射波は初め+モード成分が卓越していたのにもかかわらず、それが遠方へと伝播していく途中で、入射波との相互作用によってXモード成分への転換(偏光ベクトルの回転)が引き起こされることを明らかにした。この結果は重力波の非線形相互作用によるファラデー効果の重要性を示すものである。 3.ブラックホールの衝突:シュヴァルツシルド時空における摂動論を用いて、2体衝突過程における重力場の振舞を解析した。まず、定常ソリトン解を参考にして、2体ブラックホールの重力場を表わす初期値を設定した。次に、その時間発展を計算し、衝突へと向かう自由落下運動の開始、パルス的重力波の放出、ブラックホールの表面積の増大などを示すことができた。これらの成果を踏まえて、非可積分な非定常アインシュタイン方程式について、より厳密な解析方法の開発を進展させたい。
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[Publications] A.Tomimatsu: Gen.Rel.Grav.21. (1989)
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[Publications] A.Tomimatsu: Gen.Rel.Grav.
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[Publications] T.Yamada: J.Phys.Soc.Japan.