1987 Fiscal Year Annual Research Report
極低温における回転状態を識別したイオン・分子反応の研究
Project/Area Number |
62540283
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
金子 洋三郎 東京都立大学, 理学部, 教授 (30086988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 信夫 東京都立大学, 理学部, 助教授 (30087100)
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Keywords | 極低温イオン・分子反応 / ヘリウムクラスターイオン |
Research Abstract |
入射イオン型移動管質量分析は, 移動管部に約0.5Torrのヘリウムガスを充し, そこへ質量を同定したイオンを外部から入射させ移動管内部の電場強度を変ることによりイオンの運動エネルギーをコントロールするものである. 移動管部を冷却することにより, 測定下限エネルギーを移動管温度まで下げることが出来る. 本年度, 極低温におけるイオン・分子反応の研究を目的として, 移動管部を液体ヘリウムで冷却したところ, 入射イオンを核とするヘリウムクラスター(XHe_n)^+が検出された. ヘリウムクラスターイオンの生成は, 本研究が世界で初めて成功したものであり, 急拠目的を変更してヘリウムクラスターイオン生成の研究を行うことにした. 移動管内で生成されたクラスターイオンがイオン検出部の残溜気体と衝突してこわれている可能性が考えられたので, 本補助金によりターボ分子ポンプを購入しイオン検出部を差動排気したところ安定したクラスターの質量スペクトルを得ることが出来るようになった. He+を入射させ, He_n^+(n【less than or equal】5)のn分布を移動管内のガス圧を変えて測定した. その結果, 移動管内のn分布は平衡に達していることが判明した. 又圧力を一定にし, イオンの実効温度を変えてスペクトルを測定することから, クラスターの結合エネルギーに関する情報を得ることが出来た. その結果He_2^+, He_3^+は結合エネルギーの大きな準分子イオンであり, n【greater than or equal】でクラスターとなること, さらに, nが10と11, 14と15の間で結合エネルギーの不連続が存在しn=10と14が魔法数であることが明らかになった. これ等の結果から, ヘリウムクラスターの安定構造について重要な知見を得ることが出来た. また, 中性クラスターHe_nについて魔法数n=10, 14が報告されていたが, それは電子衝撃によるイオン化のために, 安定なクラスターイオンに解離するためであることが明らかになった.
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