Research Abstract |
極地域の氷床や氷河で掘削した氷試料を分析して, 過去の氷床・氷河の規模や当時の気温を推定することができる. 氷床・氷河を推定するためには, 氷試料に含まれている空気量の分析が, また気温の推定には, 試料の同位体組成の分析が, 最も有力な手段である. しかし, 極地域以外の氷河では, 積雪が氷化する過程で融解水が存在するため, 空気の捕捉量や同位体組成が, 極地域の場合とは大きく異なる. 従って極地域の場合と同様に, 氷試料の分析から過去の氷河規模や気候変動の歴史を解明するためには, 融解水が存在する湿雪の氷化過程を, 空気捕捉や同位体分別の観点から調べなければならない. そこでまず, 雪・水の混相状態におけるそれぞれの同位体組成の時間変化を調べた. その結果, 混相状態になった初期には, 同位体組成が雪, 水ともに一様化の方向に進行するが, その後, 雪粒子の方に質量数の大きい同位体が, より偏在するように変化していく様子を定量的に求めることができた. さらに, この現象を, 雪粒子の成長過程と関連させて解析し, 同位体の平衡分別モデルによって説明した. 次に, 湿雪の氷化実験を行い, 雪粒子の成長過程が, 単なる混相状態と氷化過程とで同様であることを見出した. 固相と液相それぞれの同位体組成の変化の様子も, 上に述べた現象と殆どかわらないこと, つまり, 混相状態で得たモデルがそのまま適用できるということもわかった. さらに, 実験的に氷化させた試料の含有空気量は, 氷化荷重には依存しないが, 含水率と圧縮もしくは凍結速度に大きく依存することを明らかにし, それらの関係を定量的に求めることができた.
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