1987 Fiscal Year Annual Research Report
光電子放射分光法による溶存化学種の外部イオン化電位の測定
Project/Area Number |
62540356
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 巌 大阪大学, 理学部, 助教授 (50028239)
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Keywords | 溶存化学種 / 外部イオン化電位 / 光電子放射分光法 / 電子分極エネルギー / 構造緩和エネルギー |
Research Abstract |
1.溶液用光電子放射分光装置を開発し, 溶存化学種のイオン化電位を測定した. 測定した試料は種々のアルキルベンゼン, コバルト(II)錯体, 銀イオン, タリウム(I)イオン, ルテニウム(III)錯体等であり, 溶媒としては水, および各種の有機溶媒を用いた. 2.これらの試料の真空中のイオン化電位と溶液中のそれとを比較して溶媒分子の電子分極エネルギーを求めた. ボルン式を適用すると電子分極エネルギーから光イオン化を受ける中心分子の有効溶媒和半径を求めることができる. この数値は溶質分子の周囲にいかに溶媒分子が配置しているかについての情報となる. ベンゼンにアルキル基を導入した場合, 導入した置換基の数と共に有効溶媒和半径が大きくなる様子が観察された. その関係を精密に分析した所, ベンゼンの分子面の上下に溶媒分子が配置しているとの結論が得られた. 3.溶液中におけるイオン化電位と電気化学的酸化電位との比較から電子移動反応の構造緩和エネルギーを求めることができる. この構造緩和エネルギーは電子移動反応の活性化エネルギーと密接な関係のあるものであり, コバルト(II)についての研究からコバルト(II)イオンと(III)イオンの電子交換反応の速度の異常性はこれらのイオンの電子スピンの変化によって説明できることがわかった. 4.酸化電位の不明な銀(I)イオンおよびタリウム(I)イオンについてイオン化電位の測定からこれらのイオンの酸化電位の上限値を得ることができた.
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[Publications] M. Takahashi: Bull. Chem. Soc. Jpn.60. 9-18 (1987)
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[Publications] K. Yokoi: J. Electroanal. Chem.217. 305-311 (1987)
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[Publications] T. Ozeki: J. Electroanal. Chem.236. 209-218 (1987)
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[Publications] K. Yokoi: Chem. Lett.1453-1456 (1987)
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[Publications] T. Nakayama: Bull. Chem. Soc. Jpn.61. 673-6771 (1988)
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[Publications] M. Takahashi: Can. J. Chem.(1988)