1987 Fiscal Year Annual Research Report
トロピリウムイオンを電子受容体とする分子内電荷移動相互作用と立体配座について
Project/Area Number |
62540384
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山村 公明 神戸大学, 教養部, 教授 (60031358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 秀芳 神戸大学, 教養部, 講師 (40181995)
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Keywords | トロピリウムイオン / P-ベンゾキノン / 電荷移動相互作用 / 半波還元電位 / 「立体配座適応」 |
Research Abstract |
トロピリウムイオンは優れたπ塩基であるので, 下に示す化合物1__〜では, ベンゼン環との間の分子内電荷移動相互作用が, 立体障害を克服して, トロピリウム環とベンゼン環とが互いに平行に近い配置を採るのではないかと考え, 1__〜及びその誘導体を合成し調べた. 電子スペクトルにおいて10^<-3>mol/l位の濃度では, 電荷移動吸収帯が認められたが, より濃度を低くするとこの吸収帯は消失した. この吸収は, 単純な分子間相互作用に基ずくものとは考えられないが, 詳しい事は現在なお検討中である. P-ベンゾキノンは, トロピリウムイオンと同様に優れたπ塩基であるが, トリプチセンの1つのベンゼン環をこれで置き換えた形の化合物2__〜, 及びいくつかの誘導体について, 半波還元電位を調べた. P-ベンゾキノン環とベンゼン環とは直接には共役していないが, ベンゼン環上の置換基効果がはっきりと認められた. Pベンゾキノン誘導体の半波還元電位に対する置換基効果は古くから研究されてきているが, この様な直接的に共役していない系での研究は初めてのケースである. 観測された結果は, LUMO-LUMO相互作用, LUMOの係数の大きさ等で説明可能である. さらに, 従来メチル基をメトキシ基が共役系に結合している場合には, 後者の方が電子供与性は大きいとされてきていたが, 逆の結果が認められた. プロペンとメチルビニルエーテルをモデル化合物とし, 理論的取り扱いを行った結果, 「立体配座適応」という全く新しい概念を提出した. 従来, メトキシ基とメチル基との電子供与性の逆転という実験結果に対し, I効果がM効果に勝っている為というように議論されてきたが, この新しい概念は, 大きな議論を呼ぶものと考えている.
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[Publications] K. Yamamura;H. Miyake;S. Himeno;S. Inagaki, et al.: Chemistry Letters.
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[Publications] S. Inagaki;T. Okajima;K. Yamamura;H. Miyake et al.: Chemistry Letters.
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[Publications] K. Yamamura;H. Miyake;K. Nakasuji;I. Murata: J. Chem. Soc., Chem. Commun.