1987 Fiscal Year Annual Research Report
水界食物連鎖系における窒素・リンの生物間移行過程の解析
Project/Area Number |
62540504
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡辺 泰徳 東京都立大学, 理学部, 助手 (20112477)
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Keywords | プランクトン / 食物連鎖 / 窒素 / リン / 細菌 |
Research Abstract |
水界プランクトン群集における食物連鎖過程の研究は, 従来, 乾燥重量や炭素重量(C)を指標として研究されていたが, 本研究では窒素(N), リン(P)の両元素を中心にして移行過程を追跡している. その基礎資料を得るため, 富栄養湖の諏訪湖と貧栄養湖の奥多摩湖を調査地として, プランクトン生物をサイズ別に採集して, そのC, N, P含量を測定した. その結果, 富栄養湖では細菌のP/C比, N/C比が高くなる傾向が確認され, また植物プランクトン体のN又はPは, そのどちらかが制限栄養因子になっている場合に一定の値まで低下することが判明した. この状況は, 3H標識チミジンのとりこみ速度から求めた細菌の生産速度および14C標識炭酸を用いて調べた植物の光合成生産速度に反映することが認められた. これらN/C, P/C比の異なる生物粒子を餌として餌育した動物プランクトン(ミジンコ)の成長速度と体長別の固体乾重量, N/C, P/C比を実測した. N含量の低い緑藻Chamydomonasを餌とすると, ミジンコの成長および繁殖速度が低下したが, これは餌密度が低い場合にかぎられ, 餌密度が高い場合にはN含量の低下は大きな影響を与えなかった. 餌条件がミジンコの体成分元素組成にどのように影響するかを検討したところ, 好条件の場合にかえってN/Cが低下することがわかった. これは成長が充分保償される条件したでは, ミジンコが肥質を貯蔵することによると推定される. 細菌-原生動物, 植物プランクトンー動物プランクトン間の連鎖について, N/C, P/Cを指標として接触実験による解析をすすめている.
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