1987 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系I反応中心複合体内部のクロロフィル, キノンの存在状態と機能の関係
Project/Area Number |
62540519
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
伊藤 繁 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物研究所, 助教授 (40108634)
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Keywords | ホウレンソウ / 光化学系I / 反応中心 / 電子伝達反応 / キノン / クロロフィル / 蛍光 / 極低温ESR |
Research Abstract |
植物光化学系I(PSI)反応中心は, 強力な還元力を作りだしNADPを還元する点で紅色光合成細菌あるいは光化学系II反応中心とは異なり, その内部構造も異なると推定されてきたが, その構成電子伝達成分が完全に明らかになっておらず, 研究が遅れていた. 特にその内部に存在するphylloquinone(ビタミンK1=VK1)の役割が不明であった. 本研究ではVK1の役割を, ナノ秒分光, 蛍光法, 及び極低温ESR測定法による電子伝達反応の解析から明らかにした. この結果, 光照射により反応中心クロロフィルa(P700)と電子受容体クロロフィルa(AO=CHL a 687)間で電荷分離がまず生じ, 電子は更に電子受容体(A1=VK1), FeSセンター(FX, FA, FB)へと流れると推定された. VK1は, そのセミキノンが非常に低い酸化還元電位となり(Em<-700mV), Hの関与なしに電子伝達を行えるような反応環境にあると結論された. また, これまでPSIの遅延蛍光は観測されていなかったが, VK1抽出後のPSI粒子は新たに279Kで694nm, 77Kで701nmに発光極大を示す蛍光をしめす. 時間分解蛍光スペクトル測定を行った結果, この蛍光の大部分はPSIでの電荷再結合により再励起された反応クロロフィル(P700)が基底状態に落ちる際に生じる事が明きらかになった. 以上のような測定結果からVK1の反応様式, 速度が推定された. この様な電子移動の様式は, PSII及び紅色光合成細菌の反応中心内部での電子移動と似ており, 構成ポリペプチドのかなり大きな違いにも関わらず, 反応中心内部構造は似ている事が明きらかになった.
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[Publications] S. Itoh, M. Iwaka and I. Ikegami: Biochimica et Biophysica Acta. 893. 508-516 (1987)
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[Publications] I. Ikegami and S. Itoh: Biochimica et Biophysica Acta. 893. 517-523 (1987)
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[Publications] S. Hoshina and S. Tioh: Plant and Cell Physiology. 28. 599-609 (1987)
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[Publications] Y. Isogai, M. Nishimura and S. Itoh: Plant and Cell Physiology. 28. 1493-1499 (1987)
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[Publications] Y. Yamada, X.-S. Tang, S. Itoh and K. Satoh: Biochimica et Biophysica Acta. 891. 129-137 (1987)
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[Publications] A.Hata-Tanaka, K. Matsuura, S. Itoh and A. Anraku: Biochimica et Biophysica Acta. 893. 289-295 (1987)