1988 Fiscal Year Final Research Report Summary
矮性成熟に着目した寒冷気候に対応するシダ植物の種分化
Project/Area Number |
62540521
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
植物形態・分類学
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 利幸 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (00154071)
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Project Period (FY) |
1987 – 1988
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Keywords | シダ植物 / 発達段階 / NV / 形の複雑度 / 数(N) / サイズ / 発生理路 / 脈理比(SNV) |
Research Abstract |
本研究ではシダ植物の個体発生段階を、NVにより50-100段階に区分し、その各段階の個体数・大きさ・形を計測した。葉形には明瞭な差異がないが羽片レベル・サイズを付加してはじめて差異が認められる種群(オシダ・カラフトメンマ・D.filix-mas)が見い出された。このように種差が見いだされるレベルに応じて、種間の距離が量的に把握できる。また個体発生における形とサイズと葉数の定まる順番がオシダ属(タニヘゴ・ミヤマベニシダ・タニヘゴモドキ・オシダ)では決まっており、環境の違いに応じた変動が葉数、サイズそして葉形へと狭まる傾向が示された。すなわち寒冷気候傾度などに応じた種内分化は、まず葉など数(N)、長さ・面積などのサイズ、そして葉や地上部(群葉)の形(無単位)など、異なるレベルでの分化が考えられる。形などに見られる種内分化は、サイズの変化よりかなり起こりにくく、環境傾度に応じてみられる変化も、発生理路の短縮・延長が関与している場合が多いと考えられる。また数種のシダと林床顕花植物の群葉構造の季節変化をサイズと形の両面から測定したところ、両者(サイズ・形)は必ずしも同調せず秋の葉が春の葉よりも単純な形(複雑度)を示した。ダイコンソウとオオハナウドでは個体内の葉のサイズ・形とも生長とともに増すことが定量的に示された。さらに数種の移植したシダ(カラフトメンマ・イワカゲワラビ・オシダ・シラネワラビ)で、開葉過程のサイズと形を追跡したところ、展開時は長さ、縦横比が同じ別種の葉でも、サイズ増加に伴う形の軌跡が異なることが見い出された。すでにジュウモンジシダで暖地ほど単位脈理長(SNV.NV/長さ)が高いことが示されている。すなわち、まず脈理比(SNV)などから環境への対応が始まりサイズに及ぶ、そして発生理路に縛られた形態特性の停滞などが、寒冷気候などの環境傾度に対応して種分化につながるものと考えられる。
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[Publications] 佐藤利幸: 植物分類地理. 38. 359-379 (1987)
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[Publications] Toshiyuki Sato,;Shiro Tsuyuzaki: Botanical Magazine,Tokyo. 101. 267-280 (1988)
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[Publications] Toshiyuki Sato.: Science on Form. 5. (1989)
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[Publications] Toshiyuki Sato.;George Grabher.;Kenji Washio.: Journal of Biogeography. (1989)
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[Publications] 佐藤利幸・長谷昭: 生物教材. (1989)
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[Publications] Toshiyuki Sato.: Plant Morphology. 1. (1989)
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[Publications] 佐藤利幸: "ブナ北限域におけるシダフロラ特性-北海道におけるシダ植物の出現頻度・水平分布・垂直分布にもとづく比較定量- 「中西哲博士追悼植物生態・分類論文集」" 神戸群落生態研究会, 271-289 (1987)
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[Publications] 佐藤利幸・渡辺定元: "大平山自然環境保全地域及び周辺地域におけるシダクロラの特性-石灰岩要素と種の出現頻度および水平分布にもとづく定量-大平山自然環境保全地域調査報告書" 環境庁自然保護局, 109-131 (1987)