1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62540533
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 教世 北海道大学, 理学部, 講師 (10001851)
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Keywords | 嗅細胞 / イオンチャンネル / 環状ヌクレオチド / ホウルセルクランプ / 嗅受容器電位 / フォスホジエステラーゼ / 嗅覚順応 / サイクリックGMP |
Research Abstract |
嗅細胞は匂い刺激を受けると, 嗅受容器電位を発生する. この受容器電位の発生は, 匂い刺激により活性化される一連の酵素反応系により産生される環状ヌクレオチドによって嗅細胞膜のイオンチャンネルが開けられることによる, と考え, 両棲類(カエル)の嗅上皮組織から酵素処理により得た単一の嗅細胞に, パツチクランプ法の一変法であるホウルセルクランプ法で, 環状ヌクレオチド類, それらの誘導体, ホスホジエステラーゼの阻害剤等を直接注入し, 嗅細胞膜のコンダクタンスにどの様な変化が見られるかを検討した. 予想通り, C-GMPやC-AMPの注入に対して, 一過性のコンダクタンス上昇(内向電流反応)が見られ, 嗅細胞の匂い刺激に対する嗅受容器電位と同質の反応が得られた. これらの環状ヌクレオチドに対する反応は特異的で, 他のヌクレオチドには大きな反応はなかった. 又これらに対する反応にはATPやGTPなどの存在を必要としないことから, これらは細胞内伝達因子として他の蛋白分子の燐酸化過程を経すに直接イオンチャンネル分子に作用していることが明らかになった. このイオンチャンネルは, 主にNaイオンを透過させるが, Caイオンもある程度透過させる性質のあることも確められた. 一方細胞外部のCaイオンを除くと, 環状ヌクレオチドによる反応が, 一過性のものから持続性へと変化し, フォスホジエステラーゼの阻害剤も, 反応遅延あるいは持続応答に変化させる効果を持つことから, 嗅細胞膜には, フォスホジエステラーゼが分布していることが考えられ, 上のイオンチャンネルのCaイオン透過性と合せると, 細胞内Ca濃度の増加により活性化されるフォスホジエステラーゼの働きが, 嗅覚の順応現象を起こす原因となっていることが示唆された.
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[Publications] Suzuki,N.: Olfaction and Taste. 9. 466-467 (1988)
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[Publications] Suzuki, N.: Chemical Senses. 13. (1988)
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[Publications] I. Miller (Ed.); Suzuki, N.: "Beidler Symposium on Taste and Smell Cyclic nucleotide-induced conductance increase in solitary olfactory receptor cells." Academic Press, IN PRESS (1988)
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[Publications] 高木貞敬・渋谷達明編,鈴木教世 他: "勾いの科学(第4章 嗅細胞の生理工)" 朝倉書店, (1989)