Research Abstract |
今年度は, カイコの体液中のレクチン様蛋白と, 翅成虫原基中のエクジソン結合蛋白の分離精製と, 得られた蛋白のcharacterizationを中心に研究を行った. レクチン様蛋白については, グルタールアルデハイド処理した緬羊赤血球の凝集反応を指標として, 硫安塩析, 2価カチオン存在下での種々のカラムクロマトでの分離, 糖をリガンドとしたアフィニティークロマト, SDS電気泳動などによって精製した. その結果, この蛋白は分子量約330,000, 77,000〜83,000の4量体と考えられる. 4令から5令蛹化直前までの幼虫の体液中の, この蛋白のタイターの変動を調べたところ, エクジソンのタイターの変動につれて上下することが分った. しかし, 5令幼虫にエクジソンを与えると, day 4まではその合成が抑制されて, タイターが低下するが, その後は, 逆に合成が促進されてタイターが上昇する. 自身のエクジソンが分泌されるようになると, そとからエクジソンを与えても影響がなくなる. なお, この蛋白の抗体を作ることに成功している. エクジソン結合蛋白については, 5令幼虫から翅成虫原基を取出し, ホモジェネイトした後, 一部をとって総蛋白量を測定, 残りをエクジソンをリガンドとしたアフィニティークロマトにかけ精製した. 放射性エクジステロイドを用いて結合性を調べた結果, 分子量約25,000と60,000の2種の蛋白に強い結合能のあることが分った. 解離恒数はそれぞれ4.1および4.3nMで87%は核中にあることが分った. 4令〜5令蛹化直前までの幼虫期の原基中のエクジソン結合蛋白量を24時間おきに測ったところ, 日毎に変動するが, とくに蛹化コミットメントの前後にも大きな変化がなく, 幼虫脱皮後の5令day 0でも, 総蛋白量あたりでは, 蛹分化中のday 7〜8の時期のものとも変わり無いことが分った.
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