性的興奮過程のニューロン機構

1987 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 62540547
• Research Institution: Okayama University
• Principal Investigator: 酒井 正樹 岡山大学, 理学部, 助教授 (30027502)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山口 恒夫 岡山大学, 理学部, 教授 (60000816)
• Keywords: 動機づけ / 雄コオロギ / 交尾行動 / ニューロンの応答性 / 行動の切り替え

Research Abstract

本研究は雄の性的動機づけの神経機構の解明をめざしたものである. 接触刺激による雄コオロギの交尾反応を指標として, 性的興奮性(SE)を人為的に操作した. まず, SEの増大であるが, SEは雄が精包準備を始めると, 約1時間後, 交尾期に入ってからは一匹のままでも徐々に増加傾向をしめした. 一方SEは雌とペアにされると数分以内の求愛行動で急激に増大した. これらは断頭標本にすると, より確実に刺激に反応した. また頸部の電気刺激は雌とペアにした場合とよく似た効果をもっていることがわかり, これらにより電気刺激の効果が自然条件下でみられる求愛行動を模倣したものであることが証明された. つぎに, SEの低下についてであるが, 雄が交尾中に受けとると思われる生殖器への機械刺激を解析し, それをうまく与えることにより, 交尾を終了させえた. また, 電気刺激を用いると, 量依存的にSEを低下させ, さらに一定量を越えると交尾を完全に停止させることができた. つまり, 電気刺激は自然な交尾完了時に生じる感覚信号を代行しうることが証明された.
そこで, これらの結果から, 交尾期にある雄を断頭し, 頸部と生殖器への電気刺激を交互にくり返し, SEのレベルを上下させ, 中枢神経系のニューロンの活動性との関係を調査した. 手始めに腹部縦連合中にあり, 尾葉からの風情報を送る巨大介在ニューロンの応答を細胞外記録により調べたところ, SEの増大時には風応答が増大し, SEの低下とともに応答性が減少するという行動レベルとニューロンレベルでの並行関係が見られた(IBRO, Satellito Symposium im Hungary 1987). しかし, このような標本は全体の約10%に過ぎず, 今後さらに詳しい研究が必要である. 交尾行動の解析については, J.Comp Physiolに受理され, 目下印刷中である.

Research Products

• [Publications] Sakai, M: J. Comparative Physiology. 162. (1988)
• [Publications] 酒井正樹: "電気生理学的研究-新生理学大系12高次脳機能の生理学" 医学書院,
• [Publications] 酒井正樹: "学習行動-新生理学大系11行動の生理学" 医学書院,