Research Abstract |
当初研究材料として予定していた北日本産コブコケムシのうち厚岸産の2種(sp.4, sp.6)は, 材料が少なかったために十分な研究が行えず, 今回の結果には含めなかった. 今回材料とした5種のコブコケムシの初期群体の走査型電子顕微鏡写真を二次元画像解析装置のデジタイザーにセットし, 以下の個虫形質を測定した. 1, 2自活個虫の長・短径, 3, 4自活個虫開口部の長・短径, 5, 6自活個虫周口孔の直径と数, 7-10不定性・代位性鳥頭体の長・短径, 11, 12不定性・代位性鳥頭体の顎の長さ, 13自活個虫開口を基準面とした不定性鳥頭体の角度, 14代位性鳥頭体の群体単位面積あたりの数, 次に結果のまとめを述べる. 1.5種ともに上記14個の測定形質において大きな変異を示した. 2.変異は各種ごとの群体内(つまり個虫間)においても著しかった. 3.種内変異が比較的小さい形質は, 3, 4, 7, 8, 11であった. 4.全種間で変異の重ならない形質は一つもなかった. 5.2種づつペアにした場合には変異の重ならない形質が存在した. それらは以下の通り. sp.1とsp.2間の3, 4, sp.7とsp.8間の9, 10, sp.1とsp.3間の9, 10, sp.2とsp.3間の14, sp.3とsp.7間の13, など. 以上の結果から各形質の変化系列を考察した. それぞれの形質の測定値を大→小または小→大に並べ, まず全形質の整合性を調べたところ, 1と2, 3と4など当然整合すべき対形質をのぞけば, 残念ながら全く同じ変化傾向を示す形質は二つとなかった. つぎに子孫形質の探査を行った. 今回の計量形質の場合, 値の大きい方を子孫形質とするか, それともその逆にするかの判断を行いえなかった. さらにはそれらの形質変化の適応的な意味をとらえられなかった. 全く別の形質を導入しない限り, コブコケムシの分岐分類は困難であると今回の研究で結論した.
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