1987 Fiscal Year Annual Research Report
低温プラズマCVD法による鉄合金薄膜の膜応力とミクロ構造の原子的尺度での解析
Project/Area Number |
62550008
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
入戸野 修 東京工業大学, 工学部, 教授 (40016564)
|
Keywords | 低温プラズマ / 鉄窒化鉄 / 膜応力 / スパッタリング / 電子顕微鏡観察 / 保磁力 / α-Fe / ε-Fe_2-3N / γ^--Fe_4N |
Research Abstract |
本研究では, アルゴンスパッタリングガスに微量の窒素ガスを混入した雰囲気中で純鉄ターゲットを用いてプラズマスパッタリングで作製した窒化鉄薄膜に焦点を絞り, 微細構造と膜応力の変化と磁気特性との関連を調べた. 以下に交付申請書に記載した研究計画に対応させて簡単に述べる. 1)低真空予備排気装置で作製した鉄窒素膜の結晶構造の研究:反応スパッタ条件を種々変化させて作製した薄膜の構成相および結晶性をX線解析法, 電子回析・電子顕微鏡法で調べた. その結果, 所定の構成相のみの薄膜はスパッタ女権の制御で, また, 蒸着後の熱処理で作製できることがわかった. 窒化鉄膜の結晶性は窒素ガス圧に敏感で, 堆積薄膜は鉄原子の原子配列状態を高分解能電子顕微鏡で観察することにより評価された. また, 真空中供鈍による微細構造変化も併せて調べられ, 鉄および窒素原子の配列状態の変化と微細構造変化との関連が考察された. さらに, 同一条件で調べた磁性変化との関係が論じられた. すなわち, 薄膜の保磁力は格子緩和・回復により一度低下し, 今度は異相の析出および結晶性の増大により再び増加することがわかった. 格子緩和・回復は膜応力の低下で解析された. この時, 基板により膜応力低下の種子が異なることも指摘された. 2)鉄窒素膜の膜厚と膜面内応力の関係:膜厚により膜面内応力の変化が観察されたが, これが何に起因するかについては, さらに多くの実験事実を蓄積することが必要である. 3)高真空予備排気装置で作製した鉄窒素膜の結晶構造の変化:今回使用した装置系では, 真空度による微細構造変化は著しくなかった. 反応スパッタ法での特徴であるかどうかは, 今後の実験に待たねばならない. 4)以上の結果を検討し, 実用材として薄膜鉄窒化鉄を安定化させるための基礎資料を得ることができた.
|
-
[Publications] 宮声凱, 入戸野修: Trans. Jpn. Inst. Met. 29. 87-96 (1988)
-
[Publications] 入戸野修, 宮声凱: JIMIS-5. (1988)