1987 Fiscal Year Annual Research Report
耐熱・耐摩耗性高ケイ素-アルミニウム合金の機械的強度と靭性の向上
Project/Area Number |
62550054
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 保雄 信州大学, 工学部, 助教授 (20142284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 光征 信州大学, 工学部, 教授 (80021020)
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Keywords | 高ケイ素-アルミニウム合金 / 初晶ケイ素微細化処理 / リン及びイオウの複合添加 / 機械的性質の改善 |
Research Abstract |
耐熱・耐摩耗性高ケイ素-アルミニウム合金の機械的性質の向上のために不可欠である初晶ケイ素の微細化に関し, 従来より有効性が実証されているリンに加えて, イオウ及びイオウ化合物を合金熔湯中に複合添加する処理法の効果について主に金属組織学的検討を行い, 以下の結果を獲た. 1.リンと同時に複合添加されたイオウは, 基本的には初晶ケイ素の微細化晶出核ALPに偏析して, ALP核結晶の安定性と生成密度を高める作用を有するものであることがEPMA, 電子顕微鏡観察等で判明した. 2.イオウを固体イオウあるいはイオウ化合物の形で添加する方法に替えて, 液体の塩化イオウを使用し, これを窒素ガスで搬送しながら, 微量づつ連続的に熔湯中に添加する処理法を採用すれば, イオウの燃焼反応が抑制され, 所要イオウ量を低減し得る. しかも搬送用窒素ガスは合金熔湯の脱ガス作用も併せ遂行可能とする利便性を兼備している. 3.この方法により, リンフラックスによるリンの単独添加処理で達成される効果と比較して, 初晶ケイ素を結晶粒度で約1/2程度まで, さらに微細化させることが可能であった. 4.しかし, イオウの複合添加は, 実用合金JIS-AC9A, AC9B系では, これらの含有されるマグネシウムが妨害作用を及ぼし, イオウの歩留りを低下させるために, 十分には初晶ケイ素が微細化されないこと, 現時点では未だ多量のイオウの添加を要し, 必然的にイオウの燃焼ガスによる環境汚染回避策が未解決である等の課題を残している. マグネシウムは本合金には不可欠な時効強化元素であり, これを欠落させることは問題の解決にはならない. 5.イオウとリンの同時添加で初晶ケイ素の微細化を促進することは, 引張強さや破断伸びの向上など, 機械的性質の改善に繋がる. また, 微細ケイ素相の均一分散組織を従来のリン添加法にイオウを併用添加するのみの簡単な処理法で実現できる本研究の手法は, 実用上の有効性も期待できる.
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