Research Abstract |
最近の確率論的安全評価手法の普及, システムの巨大化と複雑化, 人工知能研究の進展を考えたとき, 安全性を確保する上での安全関連概念の体系化の重要性については, 多言を要しない. 本年度の研究では, 安全関連概念の現状調査を行うと共に, 知識工学, システムのモデル化, およびフォールト・ツリーの自動生成との関係を考察し, 次年度の研究方向を明らかにした. 1.約5000語の語句を抽出し, フローという基本概念を基にし, 概念の分類を試みた. フローの候補として物質概念を取り上げ, フローの属性の一部として数値概念を考察した. フローのソース, 通過およびシンクの場所としての装置概念を考え, 人間についても考察した. 2.知識工学について調査し, 概念の体系化との関わりを示した. 3.フォールト・ツリーの自動生成を念頭に置き, 工学システムの意味ネットワークによるモデル化手法を与えた. ここに, ネットワークの1つの節点は, フローまたは装置に対応し, 枝はフローと装置間の関係を表す. この関係として, 使用, 供給, および開閉を導入し, フロー間の属性の単調関係により, これらを詳細化した. 具体的な反応器系を取り上げ, システム・モデルの一例を与えた. 以上の研究から, 漠然と体系化を進めるのではなく, フォールト・ツリーの自動生成という試金石を持ち, 明確な目的を持つことの重要性が明らかとなった. 次年度では, このアプローチを更に発展させ, 研究を続ける. なお, 意味ネットワーク中の事実概念だけではなく, 人間の発見的手順に関する概念をも, 対象にできるようになると思われる.
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