大気エアロゾル粒子の発生源別汚染寄与率の推定

1989 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 62550399
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 笠原 三紀夫 京都大学, 原子エネルギー研究所, 助教授 (80027143)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 東野 達 京都大学, 原子エネルギー研究所, 助手 (80135607)
• Keywords: 大気エアロゾル / PIXE分析 / 多元素同時分析 / 大気粒子の発生源寄与 / リセプタ-モデル / 大気試料

Research Abstract

本年度は以下の3研究課題について検討した。
1.多元素同時分析法としてのPIXE法の検討;基本設備である加速器が従来のVan de GraffからTandem型加速器に変わったため,新しいPIXE測定システムの特性、特にビ-ムの種類やビ-ムエネルギ-、アブソ-バ-の選定が、測定感度や精度に及ぼす影響を調べ、ル-ティン測定条件のための最適照射・測定条件について検討した。本課題では、昭和62年度に検討し作製した9元素標準試料を用いた。
2.大気エアロゾル粒子の元素分析;種々の環境条件下で粒子を補集・分析し、粒子状物質の化学性状を調べた。なお本年度6月からは、自動サンプリング装置を用い各季節ごとに長時間連続試料採取を行なった。採取時間は4時間を基本とし、微小粒子、全粒子(粗大+微小粒子)別に分級捕集した。(1)短時間的にきわめて大きな濃度変動を示すことから、大気汚染解析では時間分解能の高い測定が重要である。(2)大気粒子の性状調査では、粗大・微小粒子別分級捕集が不可欠である。
3.上記研究課題2で述べた大気エアロゾル粒子の金属元素濃度デ-タに対しリセプタ-モデルを適用し、発生源種別の寄与率推定を行い、発生源寄与の季節的変動特性や地球的特性について検討した。(1)土壌発生源の汚染寄与は発生源種中最大の寄与を示し20〜30%を占めた。(2)発生源対策を重視した発生源解析では、金属元素濃度と共に炭素成分や二次粒子成分の同時、連続的測定体制の確立が重要である。
4.3年間にわたる検討結果を、研究成果報告書にまとめた。
5.今後は、発生源解析法の精度向上をはかるために、モデルの改良、基本デ-タの整備を行なうとともに、微量分析法としてのPIXE法の向上、C、N、O、H等の軽元素分析法の確立、さらに酸性雨等大気汚染現象解明への微量分析技術の応用、等について研究を進める計画である。

Research Products

• [Publications] 笠原三紀夫: "Source Contribution of Atmospheric Aerosols in Japan by Chemical Mass Balance Method." Atmospheric Environment. 24. (1990)
• [Publications] 笠原三紀夫: "PIXE for Elemental Analysis of Aerosol ParticlesーPreparation of Standard Samples and Determination of Sensitivity Curveー" Environmental Science and Technology.
• [Publications] 笠原三紀夫: "大気エアロゾルの発生源寄与解析法" 大気汚染学会誌. 24. 411-414 (1989)
• [Publications] 笠原三紀夫: "粒子状大気汚染ー現象の解析と汚染度評価ー" 大気汚染学会誌. 25. 111-122 (1990)
• [Publications] 笠原三紀夫: "Elemental Analysis and Source Apportionment of Aerosol Particles Collected in Heavy Polluted Atmosphere" American Association for Aerosol Research,1990 Annual Meeting,June 18ー22,Philadelphia,U.S.A.(1990)
• [Publications] 笠原三紀夫: "Heavy Metals in Airborne Particulate Pollutnats and Its Release Sources." 3rd International Aerosol Conference,Sept.24ー27,Kyoto. (1990)
• [Publications] 笠原三紀夫: "冬期高濃度汚染時のエアロゾル性状と発生源推定" 第7回エアロゾル科学・技術討論会論文集. 97-99 (1989)
• [Publications] 笠原三紀夫: "粒子状大気汚染ー現象の解析と汚染度評価ー" 第30回大気汚染学会講演要旨集,学会賞受賞記念講演. 65-69 (1989)
• [Publications] 笠原三紀夫: "PIXE法による大気エアロゾルの分析(4),(5)" 第30回大気汚染学会講演要旨集. 395&397 (1989)
• [Publications] 笠原三紀夫: "PIXE法による大気エアロゾルの分析(6)ー黄砂粒子の元素組成ー" 京都大学エネルギ-研究所彙報. 第76輯. 75 (1989)
• [Publications] 笠原三紀夫: "PIXE法による大気エアロゾルの分析 (7)ー冬期高濃度時の発生源寄与ー" 京都大学原子エネルギ-研究所彙報. 第77輯. 70 (1990)
• [Publications] 笠原三紀夫: "主成分分析法による粒子状大気汚染の発生源寄与解析ー信頼性についてー" 大気汚染学会誌.