1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62550449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 康夫 京都大学, 工学部, 助教授 (60026284)
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Keywords | 中世 / 民家 / 町並み / 町家 / 道 / 河川 / 生活空間 / 絵画史料 |
Research Abstract |
中世民家史研究を再検討するための基礎として, 民家史関係資料を広く収集することを目ざした. 1.中世民家に関する文献資料の博捜 いわゆる古文書・古記録はもとより, 文学作品までを収集の対象とし, 民家形成・構造技術・生産組織・住生活の種々相をとらえようとした. (1) 中世京都において, 道路が生活に占めていた重要性を具体的に明らかにすることができた. 道路の上に井戸がつくられ, 炊事や洗濯に用いられている光景は, 都市下層社会の典型的風景であり, こうした様相を文献史料で示すと同時に, 絵画史料によって傍証した. (2) 同じく中世京都において, 都市を流れる中小河川上の空間が住生活空間として活用されている状況を明確にした. 地域の移り変りを究明しつつ, 河川上の空間が本来の「無縁」の場, 「公界」の街道という認識から, 社会的経済的な論理の支配する場に変質し, いわゆる「巷所」として支配体制下に組み込まれ, 通常の都市空間と同一の空間となる過程を調べた. また河川上に立つ独得の町家形式を洛中洛外図屏風を用いて示した. 以上の成果は, 著者『洛中洛外 - 環境文化の中世史』に詳細に述べた. 2.絵画史料の収集 民家や集落を描いた絵画は, 文献史料を補足し, また具体的に形態を示してくれる点, 貴重な資料群である. 本年度は従来知られていなかった洛中洛外図屏風(近世初期のものか)を手に入れることができたので, 十分検討の上成果を公表したい. また中世末期の京都を描いた洛中洛外図屏風についてその史料的重要性を考えて, 詳細な検討を行い, 論文として発表した.
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