1989 Fiscal Year Annual Research Report
建築空間史の基礎的研究ー特に古代・中世の建築を中心として
Project/Area Number |
62550451
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前川 道郎 九州大学, 工学部, 教授 (30026736)
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Keywords | 空間と場所 / ゴシック建築論 / マルセル・プル-スト / 住まうことの場所論 / 建築的時-空間論 / ジョ-ゼフ・リクワ-ト / 古代建築論 / まちを問う |
Research Abstract |
〈建築する〉とは「人間によって具体的に生きられ体験される空間を人為的に構築することである」という基本理念にのっとって、以下の三項目に示すような研究をすすめた。 1.空間論一般の基礎的研究として、イ-フ-・トゥアンやボルノウやノルベルグ=シュルツの空間論を考察し、空間と場所の意味の差異を検討して、場所とは意味の突出した空間的状況、特別な意味の発ち現れてくる〈ところ〉であることを示した。 2.マルセル・プル-ストの大作『失われた時をもとめて』を素材として、プル-ストの表象したゴシック教会堂における彼の建築体験を解明し、時間と空間の関連を教会堂のあるその場所に住まうことの意味の探究を通して考察し、教会堂の象徴性における〈時〉の意味を明らかにして、建築空間論を建築的時-空間論へと展開した。この研究は大学院生黒岩俊介君の工学博士論文「プル-ストの『失われた時をもとめて』における教会堂の建築論的研究」としてひとまずの完成をみた。 3.古代の建築と都市に関するジョ-ゼフ・リクワ-トの難解ではあるがきわめて意味深い建築論的著作“The Idea of a Town"を精読し、その理論と意味の検討を深化した。これに関する詳細な研究論文の作製は今後の課題である。なお、この著作の邦訳を完稿したが、それは大学院生小野育雄君との共訳として『まちを問う-ロ-マとイタリアと古代世界の都市の形の人間学』と題して、みすず書房より近日刊行の予定である。古代建築論の重要な文献として有用であると確信する。
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[Publications] 黒岩俊介,前川道郎: "サンタンドレ・デ・シャン教会堂と中世芸術の象徴性ープル-スト的教会堂の研究ー" 日本建築学会計画系論文報告集. 403号. 161-172 (1989)
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[Publications] 黒岩俊介,前川道郎: "マルタンヴィルの鐘塔ープル-ストの『失われた時をもとめて』に見る建築的出来事ー" 日本建築学会計画系論文報告集. 406号. 153-159 (1989)
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[Publications] 黒岩俊介,前川道郎: "鐘塔体験ープル-スト的教会堂の研究ー" 日本建築学会計画系論文報告集. 409号. (1990)
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[Publications] 黒岩俊介,前川道郎: "サンティ-ル教会堂ープル-スト的教会堂の研究ー" 日本建築学会大会学術講演梗概集. 995-996 (1989)
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[Publications] 前川道郎,西垣安比古,島岡成治,小野育雄,黒岩俊介: "住まうことの場所論的研究1ー場所と空間ー" 日本建築学会大会学術講演梗概集. 961-962 (1989)
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[Publications] 黒岩俊介,前川道郎: "サンティ-ル教会堂の鐘の音ープル-スト的教会堂の研究ー" 日本建築会中国・九州支部研究報告. 第8号・3. 377-380 (1990)