1987 Fiscal Year Annual Research Report
ハイドロキシアパタイトの特異的陽, 陰両イオン交換反応による非晶質化に関する研究
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62550561
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 喬 山梨大学, 工学部, 教授 (60020385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 通博 山梨大学, 工学部, 助手 (30143960)
初鹿 敏明 山梨大学, 工学部, 講師 (50020417)
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Keywords | ハイドロキシアパタイト / 陽イオン交換 / 陰イオン交換 / 非晶質化 / Sn^<2+>イオン / F-イオン / Cl^-イオン |
Research Abstract |
PHが3.0〜4.0の各種イオン濃度のSnCl_2水溶液(200cm^3)とHAP(0.5g)との反応特性を種々検討した結果, 水溶液中からのSn^<2+>イオンの除去量とHAP(ハイドロキシアパタイト)中から液中に遊離したCa^<2+>イオンのモル比がSn^<2+>イオンの原液濃度の増加とともに大きくなり原液濃度2.5mmol/200cm^3の時に1.0に近くなることが判明した. この結果よりSn^<2+>イオンの濃度が低い場合はH^+イオンによるCa^<2+>の溶出もてるためSn^<2+>/Ca^<2+>のモル比が1.0より小さくなり, Sn^<2+>イオンの濃度が2.5mmol/200cm^3程度(この値は試料HAP中のCa^<2+>イオンのモル数の約半分である)になると液中のSn^<2+>とアパタイト中のCa^<2+>イオンとのイオン交換反応が支配的になったものと考えられる. 反応後にpHが増加することより液中のCl^-イオンとHAP中のOH^-イオンの間でH^+イオンの手助けにより陰イオン交換が同時に起こり, OH^-イオンが遊離したものと解釈される. つぎにこのSn^<2+>イオン除去後のHAPの構造変化を粉末X線法, 赤外吸収法により検討した結果, Sn^<2+>イオンの除去量の増加に伴い, 反応生成物は非晶質化することが判明した. すなわち, HAPはpH=3.0のような酸性領域でもSn^<2+>イオンおよびCl^-イオンとH^+イオンの手助けにより陽, 陰イオン交換し, 安定な非晶質体を生成することが判明した. なお, 類似の現象は対陰イオンがFイオンの場合にも見出された. この結果は, 同一条件の同族イオンであるPb^<2+>イオン系の場合安定なPb^<2+>含有アパタイトを生成する結果や他の2価の陽イオン系ではHAPが溶解してしまう結果とまったく異なりきわめて興味深い. また, 一般にアパタイトはアルカリ性領域で安定であるとされているが, このアパタイト非晶質体は酸性領域では安定であるがアルカリ性領域では不安定であるという興味ある特性を有することも判明した. 今後この非晶質アパタイトの生体内での反応特性を検討する予定である.
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Research Products
(1 results)