Research Abstract |
CO_2を水溶液中で, Cu電極を用いて電気化学的に還元すると, 常温常圧でメタン, エチレンなどの炭化水素を生成することを, 本研究代表者は過去の研究で見いだした. 本研究課題では, この反応についてさらに詳細に研究し, 反応機構を明らかにし, 優れた電極触媒を探索することを目的とする. 前年までの研究で, CO_2の電極還元において, COが, 中間種として生成することが予測されていた. この点について, ボルタンメトリー及びクーロメトリーの手法を用いて検討した. それによれば, CO_2はまずCOに還元される. 生じたCOはCu電極に吸着され, 平行反応である水素発生を著しく阻害する. と同時に吸着されたCOは, さらにCu電極上でメタンまたはエチレンに還元されることが分かった. ここで中間生成物であるCOのCu電極にたいする吸着力は, 比較的弱く, 容易に脱離することが明らかにされた. 次に, Cu電極上での炭化水素の生成機構を解明する目的で, 生成条件と選択性について詳細に検討した. この検討において, 電極近傍のpHを規定するために, 回転リングディスク電極を用いた. また溶液中の生成物を定量するために, 紫外可視検出器をイオンクロマトグラフに組み合わせて用いた. その結果, COをCu電極上で電気化学的に還元すると, pHが高いときにエチレン, エタノール, プロパノールが多く生成することが分かった. またCO_2の電極還元を, 高濃度のKHCO_3やリン酸緩衝液中で行うと, メタンの生成が多く, 0.1M以下のKHCO_3や, 緩衝能のないKCl, KClO_4, K_2SO_4中ではエチレン, エタノール, プロパノールの選択性が高かった. 以上の実験事実から, 反応にともなって放出されるOH-イオンのために, pHが局部的に高くなっており, CO_2は電極近傍で非平衡的に存在すると考えられた. これは, CO_2の水に対する水和速度が遅いことによると結論された.
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