1988 Fiscal Year Annual Research Report
均一細孔・高酸性セラミックス多孔体に吸着した有機分子の細孔内拡散運動性と膜分離能
Project/Area Number |
62550598
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
篠田 純雄 成蹊大学, 工学部, 助教授 (30092232)
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Keywords | 膜分離 / 多孔質ガラス / 透過係数 / 表面修飾 / 自己拡散定数 |
Research Abstract |
沸点差の小さいベンゼン(b.p.80.1℃)およびシクロヘキサン(b.p.80.7℃)の選択分離を念頭に、コーニング製円筒型多孔質ガラス膜(平均細孔径4nm、比表面積200m^2/g)に対する両基質の透過性を検討した。透過係数(Q)の測定は、バルブ操作により供給ガスおよび膜内外の気相組成をガスクロマトグラフ分析できる自家製装置によった。この結果、(1)基質を単独で供給しても、混合物(モル比1:1)として供給しても、ベンゼンの透過性は、シクロヘキサンのそれよりも高い(測定温度範囲30〜70℃)、(2)温度を上げると、ベンゼンの透過性は顕著に低下するのに対して、シクロヘキサンではやや低下する程度で、ほとんど温度依存性がみられなかった(例えば単独供給系で、Q(ベンゼン)/Q(シクロヘキサン)の値は、30℃で28.8、70℃で4.7)。径が4nm程度の細孔に対する低圧領域での分子透過機構として、分子が膜表面に吸着し、表面をホッピングして移動する表面拡散と、気体分子が表面と衝突しつつガス拡散するクヌーセン拡散が知られている。ベンゼンの温度依存性は、ベンゼンの拡散が主として表面拡散によって起こるとして妥当である。一方、シクロヘキサンでは、高温ほど有利なクヌーセン拡散と低温ほど有利な表面拡散がほぼ拮抗していると考えられる。多孔質ガラス膜を硝酸アルミニウム、アンモニア、硝酸銀の各水溶液で順次表面処理することにより、Ag^+イオンを表面に固定化した(1.65×10^<-5>mol/g)。ベンゼンの透過係数は、Ag^+イオン修飾により約1/2に低下したが、シクロヘキサンではほとんど変化がみられなかった。ベンゼンπ電子ーAg^+イオン間の吸引的相互作用による膜透過性の制御と考えられる。この挙動は、NMRパルス磁場勾配法により測定された自己拡散定数の傾向とも一致した。無機分離膜に対する、このような基質特異的な表面機能化技術の発展が望まれる。
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[Publications] Sumio Shinoda;Keisuke Kubo;Tsuneta Arai;Yasukazu Saito: 膜(MEMBRANE). 12. 454-457 (1987)
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[Publications] 篠田純雄,大河内巌,市之瀬淳,山川哲: Chemistry Express. 4. 149-152 (1989)