Research Abstract |
非ベンゼン系芳香族カルボカ酸である, 2-チオフェンカルボン酸による銅(II)イオンの抽出を行ったところ, 非溶媒和性溶媒であるベンゼンにはほとんど抽出出来なかったが, 溶媒和性溶媒である1-オクタノールには, 抽出率が50%に達するところまでは, エマルジョンの生成もなく抽出出来ることが分かった. 抽出種は, CuA_2のみであり, その抽出定数はlogKox=-7.14である. しかし, このような領域では, 水相における銅(II)のチオフェンカルボン酸錯体の濃度がなかり高く, Cu^<2+>イオンの濃度に比べて無視できないほどであり, 抽出率の低下を引き起こしている. 抽出平衡の解析によりもとめた, 水相におけるチオフェンカルボン酸錯体(CuA^+とCuA_2)の全生成定数は, それぞれlogβ_1=1.24, logβ_2=1.99である. 本抽出系とは異なり, 他のカルボン酸による抽出系では, 銅(II)のカルボン酸錯体が, 水相において感知するほどに存在することはなかった. これは, 2-チオフェンカルボン酸の場合には, CuA_2の分配定数が酸自身の分配定数から, 理論的に予想される値よりもかなり小さいために, 水相に存在する銅(II)カルボン酸錯体の濃度が高くなり, 銅(II)の水和イオンの濃度に比べて無視出来なくなることに起因している. このことは, 銅(II)のチオフェンカルボン酸錯体に, 有機相への親和性を抑制するような力が働いていることを示唆している. リポ酸の場合には, 銅(II)は2量体として抽出されており, その挙動は脂肪族カルボン酸と類似していたが, チオフェンカルボン酸の場合は, 脂肪族カルボン酸の場合のように, 銅(II)の2量体は生成せず, ベンゼンには抽出されないなど抽出挙動は, 安息香酸の場合と同じであり, 共役系がカルボン酸銅(II)の2量化に何らかの影響を与えていると思われるが, これらの点に関してはいろいろの方向から, さらに詳しい研究を続けて行かなければならないと考えている.
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