1987 Fiscal Year Annual Research Report
シクロデキストリン存在下におけるハロゲン化芳香族化合物の光脱ハロゲン化反応
Project/Area Number |
62550610
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
野村 元照 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (80027763)
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Keywords | 光脱クロル化反応 / ラジカル中間体 / マルトシルシクロデキストリン / クロルフェノール / ジクロルビフェニール |
Research Abstract |
ハロゲンで置換したフェノール類やビフェニール類の光分解がシクロデキストリン類(CD)の存在によって還元的脱ハロゲン化が起こり, それぞれフェノールやビフェニールが生成することが判明した. 水中に極々少量溶解あるいは懸濁しているハロゲン化芳香族化合物の光脱ハロゲン化反応は環境汚染との関連から興味ある結果が得られたので, その概要を報告する. ハロフェノールの光脱ハロゲン化-ρ-クロルフェノール(10^<-3>M)に対して, 10倍量のβ-CDを加えて水中に溶解し, 100W-Hgランプにて30分照射したところ, Cl基がHに置き変わったフェノールが定量的に生成した. β-CDがない, あるいはβ-CDの代りに包接能力を有しないトレハロースを用いて, 同様に光照射を行なったところ, フェノールの生成は認められなかった. このことからフェノールの生成はβ-CDの包接作用が働らいていることが示唆される. m-クロルフェノールの反応性は極わめて但く, 同じ条件では基質がそのまゝ回収された. 2,3,4-トリクロルフェノールのβ-CD存在下での光脱クロル化反応もまた, 主生成物として, 2,3-ジクロルフェノール, m-クロルフェノールが生成した. ハロゲン化ビフェニールの光脱ハロゲン化-4-クロルビフェニールや4,4′-ジクロルビフェニールはβ-CD水溶液中においては, β-CDと包接化合物を形成して沈殿するので, マルトシルCD(商品名:イソエリート)によって加溶化した. マルトシルCD水溶液に加溶化した4-クロルビフェニールの光照射では, 分解した基質に対して, 65〜75%の収率で, ビフェニールが生成した. また, 4,4′-ジクロルビフェニールの場合も還元的脱クロル化が優先して起こり, 4-クロルビフェニール, ビフェニールが生成した. 以上のことから, この光反応はCDと包接化合物を形成することによって殆ぼ選択的に進むことが分った.
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