1987 Fiscal Year Annual Research Report
金属オレフィン錯体を経由する触媒反応の高選択性発現原理
Project/Area Number |
62550630
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒沢 英夫 大阪大学, 工学部, 助手 (40029343)
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Keywords | オレフィン錯体 / 金属錯体触媒反応 / 還元的脱離 |
Research Abstract |
合成化学における現在の中心課題の一つは, 遷移金属錯体を触媒する高選択性反応の開発である. 金属-オレフィン錯体活性種を経由する触媒反応は近年盛んに研究されているが, 残念ながらこれらの反応で立体選択性の優れたものは余り多くない. また, たまたま選択性の良いものがあってもその機構論的群細の解明はおくれている. 本研究は, 金属-オレフィン錯体を経由する触媒反応のうち, 高選択的不斉アリルカップリングおよび幾何選択的オレフィン異性化反応を達成する方法を創出し, その高選択性発現の原理を分子科学のレベルで解明することを目的として行ったものである. 予備的な触媒反応実験として, πアリルパラジウムー不斉オレフィン錯体を触媒に用いて塩化フェニル亜鉛反応剤と2-クロロー3-ペンテンとの間のクロスカップリング反応を試みたところ, 低温の反応である程度の不斉収率を持つ炭素炭素結合生成物, 2-フェニルー3-ペンテンが得られることが判明した. さらにカチオン性πアリル白金-オレフィン錯体を合成して末端の1-オレフィン(ブテン, アリルベンゼン等)の異性化反応の触媒に用いたところかなりの活性度を示すことが判明した. 次にカップタング反応がオレフィンにより促進される原理を解明するため, 中間体モデルと考えられる, ペルクロロフェニル(πアリル)パラジウム, オレフィン錯体を溶液中で発生させ, オレフィンとパラジウム間の結合特性をNMRスパクトルデータを基に推定した. その結果, 電子吸引性オレフィンの配位でパラジウム鵜の電子密度は減少し, これは炭素-炭素結合生成のための還元的脱離を有利にする原因であると推定した. これらの知見は, さらに高選択的触媒反応の設計に有用であると考えられる.
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