1988 Fiscal Year Annual Research Report
金属オレフィン錯体を経由する触媒反応の高選択性発現原理
Project/Area Number |
62550630
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒沢 英夫 大阪大学, 工学部, 助教授 (40029343)
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Keywords | オレフィン錯体 / 錯体触媒反応 / 還元的脱離 |
Research Abstract |
合成化学に於ける、現在の中心課題の一つは、遷移金属錯体を触媒とする高選択性反応の開発である。本研究は、金属オレフィン錯体を経由する触媒反応の機構論的解明を展開し、いくつかの触媒反応における高選択性発現の原理を、分子科学のレベルで設計可能にすることを目的とする。本年度の重点的研究成果は、πーアリル金属種が還元的脱離や還元的求核置換反応を通じてオレフィン金属種へと変換される過程で発現される選択性の原理に関するものである。まず、πーアリル(アリール)パラジウムにキレート性ジホスフィンを加えると、πーアリルの結合はなくなり、σーアリルが生成し、還元的脱離はおそくなることが判明した。これに対して、同様のニッケル錯体の系では、ジホスフィンを含む中間体は、σーアリルではなく、18ー電子構造のπーアリル錯体であることが、低温溶液中における^1H,^<31>P,^<13>C NMRスペクトルの解析から明らかになった。この溶液の温度を上昇させると、還元的脱離がすみやかに起こった。還元的脱離の速度を、16ー電子系と18ー電子系のπーアリルニッケルで比較すると、後者の方がはるかに高い反応性を示すことが判明した。おそらくニッケル金属とオレフィンとのπ結合の容易さが、これらの特異な高反応性、高選択性の要因であろう。つぎに、πーアリル(アセチルアセトナート)錯体の還元的求核置換を、パラジウムと白金錯体とで比較したところ、意外なことに、白金でもかなりの高反応性を示すことが判明した。これの理由として、πーアリル基と金属との特異な結合性格(やや還元状態が増加した金属原子を要求)が考えられる。この原理を応用して、従来はパラジウム触媒に限られていた触媒的アリル基のアルキル化を、白金触媒でも実行可能なことを確立することに成功した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hideo Kurosawa,;Hiroaki Ohnishi,;Mitsuhiro Emoto,;Yoshikane Kawasaki,;Shinji Murai: J.Am.Chem.Soc.110. 6272-6273 (1988)
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[Publications] Hideo Kurosawa,;Koichiro Ishii,;Yoshikane Kawasaki,;Shinji Murai: Organometallics.