1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62550656
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
緒方 直哉 上智大学, 理工学部, 教授 (40053574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 厚 上智大学, 理工学部, 助手 (40190566)
渡辺 正義 上智大学, 理工学部, 助手 (60158657)
讃井 浩平 上智大学, 理工学部, 教授 (30053664)
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Keywords | 固体電解質 / イオン伝導体 / イオン導電機構 / ポリエ-テル架橋体 / ポリグルタメ-ト誘導体 / アニオノマ- / イオン輸率 / 溶媒和 |
Research Abstract |
固体状態で高いイオン導電性を有する固体電解質は、固体電池、表示素子等、広範な分野におけるイオニックス素子に応用可能な新材料として極めて重要である。本研究は高分子材料を用いたイオン導電体の分子設計とその導電機構の解明を目的としている。すなわち、高分子イオン伝導体の構造とイオン導電率、移動度等の物性の相関を明らかにすることにより、機能発現の機構を解明すると同時に優れた高分子固体電解質の分子設計の基礎を確立する。 本研究では、従来から検討を進めていたポリエ-テル架橋体と無機塩との複合体をモデルとして用い、イオン輸率の測定法を確立した。さらに、イオン移動における高分子主鎖の分子運動と側鎖の分子運動の寄与を分離して議論できる剛直なα-ヘリックス構造のポリグルタメ-ト側鎖に柔軟でかつ無機塩と複合体を形成するポリエ-テルを導入した高分子を用いてイオン導電率の温度依存性を検討した。その結果、高分子中のイオン移動は側鎖に溶媒和された状態で生起し、移動するイオンの溶媒和半径と密接な関係があることを明らかにした。ポリエ-テル架橋体やポリグルタメ-ト誘導体と無機塩との複合体では、カチオンの輸率が0.4以下と小さくなった。そこで、スルホン酸基を側鎖中に固定したポリアニオン型イオン伝導体(アニオノマ-)を合成し、そのリチウムイオン(Li^+)輸率を測定したところ、ほぼ1となった。この^7Li-固体NMRの線幅の温度依存性とRamanスペクトルの測定結果よりポリマ-セグメントととLi^+との相互作用を検討した。その結果、ポリエ-テル架橋体やポリグルタメ-ト誘導体ではLi^+は溶媒和したポリマ-のセグメント運動とともに移動するのに対し、アニオノマ-では無定形相中のアニオンサイトの自由な運動により移動するのであろうと結論した。この様に本研究では高分子固体電解質の分子設計に重要なイオン導電機構に関する基礎的知見が得られた。
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[Publications] 緒方直哉: "高分子固体電解質フィルム" 繊維と工業. 46. 52-57 (1990)
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[Publications] 緒方直哉: "ペ-パ-電池" (株)冬樹社, 79 (1989)
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[Publications] 緒方直哉: "導電性高分子" 講談社サイエンフィフィク(株), 275 (1990)