Research Abstract |
本研究の対象バクテリアEnterobacter sp.AGR7株について, 種の同定を行い, E.cloacaeであると生理学的試験から判定できた. また, E.cloacae AGR7株のライゾザイムライゼイトより細胞質遺伝因子pAGR7を検出した. この細胞質遺伝因子DNA.を用い, 大腸菌Escherichia coli HB101株並びにC600-1株を形質転換したところ, 大腸菌にAGR7株の銀耐性および蓄積能の形質を与えることができた. この細胞質遺伝因子は, 例えば制限酵素HindIIIにより8断片以上に分解され, 分子量20Mdal以上と推定される大きなものであった. また, 昭和63年度の研究計画に, 大腸菌の系を用いて, 発見した細胞質遺伝因子の遺伝子工学的解析と, 目的の銀包接短鎖ペプチド発現の遺伝的調節に関する検討を組み入れるほうが望ましいと判断できた. 種々の条件で培養, 調製したE.cloacae AGR7株細胞を10,000psiフレンチプレスで破砕し, 超遠心分離(170,000×g)のす溶化(細胞質)画分を分取し, カラムにTSK G3000SWXL及びAsahipack GST520を用いた高速液体クロマトグラフィーで, さらに分画した. 溶出画分それぞれについてUV280nmでペプチドを, またUV254nmで核酸をモニターした. また, 溶出液を誘導型発光プラズマ分析器または原子吸光分析器に導き, 銀を測定した. 溶出液を前者に導く場合には, S, P, Cd, Cu, Feなどの元素も同時測定した. その結果, 銀イオン投与後2時間の細胞質画分においてUV254nmで十分モニターできる程度の, RNAの増加が観察でき, 核酸レベルでの誘導が確認できた. また, 分子量約7,000のSH基に富む短鎖ペプチドを確認した. それは銀イオンよりも銅イオンを多く包接していた. 銀イオンと特異的結合を示すペプチドは, 分子量約50,000程度の溶出画分にも検出でき, その画分は, 65°C, 10minの熱処理に対して, 比較的安定であった.
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