Research Abstract |
イネ品種フクニシキおよび日本晴の人為4倍体を1世代おき(フクニシキ)または毎世代(日本晴)の線で照射し, 2倍体と形態的に似た系統を得, 後代を栽培しつつ, 変異した形質について分析を行った. フクニシキの1つの復帰2倍体様個体は本年度すでに3世代目になり, 変異の分析がかなり進展した. 草姿, 穂, 粒形, 〓先色, 出穂期, 粒質などの形質において分離が見られ, 4倍体から2倍体様個体に復帰するときに, すでに大きな変異を内在していたことが予想される. 染色体数は現在までの観察結果では, 2n=24と正常な2倍体と同じである. しかし, 草姿(稈の長短)における分離をみても, 中間的な稈長で葉茎は細く, 粒も細い個体が出現しており, しかもこの個体の稔性は低いという異常を示している. 他の形質についても, 単純なメンデル遺伝学的法則に合わないところがあり, 染色体の構造の変化を伴う変異が誘発されていることが期待される. 日本晴ではいくつかの2倍体様の個体が得られ, 系統として栽培し, 形質の遺伝について分析を行っている. 大きな変異を誘発された1つの系統は, 今年度復帰後2世代目に当る. この系統は, 植物体のいろいろの部分に赤色を発すること, 〓や葉面に無毛のものがあること, 粒形が細長いこと(幅と厚みが減少したため), 脱粒性の個体が含まれていたこと, 極端に出穂期が遅れる個体が1個体出現したことなどの特徴を持っている. 現在までの染色体観察によると, 2n=24と正常な2倍体と同数の染色体を持っている. しかし, 染色体の形態に変化があるようであり, 分析を進める必要がある. 4倍体にγ線を照射することにより, 2倍体に復帰した個体を得ることができる. しかも, 重複した染色体の間でいろいろな染色体の異常が生じ, その異常が2倍体に照射をする場合とは異なる可能性が示唆された. さらに, 分子レベルの分析へと研究を進めている.
|