1987 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物における異種遺伝子の直接導入法に関する研究
Project/Area Number |
62560005
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
平田 豊 東京農工大学, 工学部, 助教授 (50113866)
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Keywords | 形質転換 / 遺伝子導入 / 直接導入 / 接木変異 / カナマイシン抵抗性 / ノバリン合成酵素 |
Research Abstract |
高等植物における細胞・組織培養系を用いない, 新しい異種遺伝子の導入法として, 接木法を検討した. 台木としてはすでにカナマイシン抵抗性遺伝子およびノパリン合成酵素遺伝子を持つタバコの形質転換体, 穂木にはこれらの遺伝子を持たない対照のタバコ植物, トマトおよびN.glutinosaを用い, 接木を行った. 接木の方法は従来から行ってきたメントール法を適用した. まず, 接木当代植物の穂木に台木植物の持つバクテリアの遺伝子が転移しうるか否かを調べた結果, Southern法によるカナマイシン抵抗性遺伝子やそれを含むDNA断片が量的には少ないが存在することがわかった. なお, 異種, 異属植物穂木については現在検討中である. 次に穂木の果実に形成された自殖種子に果して台木の持つカナマイシン抵抗性形質が伝わるかどうか, すなわち種子世代を通してカナマイシン抵抗性遺伝子が伝わるかどうかを調べるため, 穂木の自殖種子を10μg/mlのカナマイシン硫酸を含む1/2MS培地(寒天0.7%)で発芽させ, スクリーニングを行った. その結果, 10万以上の種子のうち70種子がカナマイシンに抵抗性を示したが, その後の順化の段階でほとんどが枯死した. わずか1個体がその後成長開花したので, そのカナマイシン抵抗性植物と台木, 穂木に用いた植物との検定交雑を行っている. なお, この大量の種子のスクリーニングには本補助金によるNK式低温恒温器が大変役に立った. 現在上記のカナマイシン抵抗性個体にその遺伝子が存在するかどうかをSouthern法で検討しつつあり, さらに異種, 異属の穂木植物についても合わせて, 分析を試みている所である. 何よりも植物の維管束系を通して, 合解されていない遺伝子の転移する結果が得られ, かつカナマイシン抵抗性植物の得られた意義は大きいと考えられる.
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[Publications] N. Yagishita;Y. Hirota: Euphytica. 36. 809-814 (1987)
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[Publications] 柳下登, 平田豊, 山下恵子, 水上元, 大橋裕: 育腫学雑誌. 32. 236-237 (1982)