Research Abstract |
農薬に主に混入されている非イオン性界面活性剤(以下, 非イオン性と略記)19種類, アニオン性界面活性剤(以下, アニオン性)4種類を, イネいもち病菌プロトプラストに作用させ, 細胞膜の破裂を基準として選別を行った. 活性剤の供試濃度は, 一般に農薬に混入される濃度, すなわち非イオン性は100ppm, アニオン性は1000ppmを中心として各3濃度とした. その結果, 非イオン性では, i)100ppmでプロトプラストを破裂させないグループと, ii)一部のプロトプラストを破裂させるグループとに分かれた. また, アニオン性では, iii)すべての供試濃度でプロトプラストを破裂させるグループと, iv)1000ppmでも一部のプロトプラストを破裂させるにとどまるグループに分かれた. 上記の各グループから, 化学構造の異なる活性剤を2種類ずつ選び出し, 菌体試験によって, i)のグループは静菌的に, ii)-iv)のグループは殺菌的に菌糸生育を抑制することが明らかにされた. そこで, 電子顕微鏡観察によってプロトプラストの細胞膜及び細胞質に対する各活性剤の作用を検討した結果, 菌体に殺菌的に作用する活性剤は細胞膜を分断し, さらに細胞質を完全に変性させる傾向が強く, 静菌的に作用する活性剤は, 細胞膜に顕著な影響をひきおこすことがなく, 細胞質基質を疎にしたり, ミトコンドリアの膨潤をひきおこすにとどまることが明らかになった. 以上の結果から, アニオン性活性剤は菌の細胞膜への影響が強く, 非イオン性活性剤はその影響が比較的少ないこと, および細胞膜破壊がおこるか否かが殺菌的, 静菌的作用の分かれ目になると推定された. 以上の他に, イネいもち病菌の宿主であるイネからプロトプラストを調製し, これに対する各活性剤の影響の検討を試みたが, 分離プロトプラストの活性を維持することが極めて難しく, 目下鋭意検討しているところである.
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