1987 Fiscal Year Annual Research Report
Mycosphaerella属植物病原菌の宿主特異性決定因子に関する研究
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62560044
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
白石 友紀 岡山大学, 農学部, 助教授 (10033268)
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Keywords | 宿主特異性決定因子 / 抵抗性抑制因子 / 抵抗性誘導 / フィトアレキジン / ピサチン / エンドウ / エンドウ褐紋病菌 |
Research Abstract |
宿主植物の抵抗性発現を抑制する非毒素性因子を生産する病原糸状菌は僅か4種が報告されているにすぎない. 特に, 感染初期に宿主-病原菌の相互認識に重要な役割を果たしている胞子発芽液中に検出されたのは現在のところジャガイモ疫病菌と今回供試したエンドウ褐紋病菌(M.pinodes,MP)に限られている. しかし, いずれの化学構造などの詳細は不明であり, 作用機構の解析を行う上で1つの障壁となっている. そこで, 金属バットに本菌を大量に培養し柄胞子を数10g単位で回収した. 胞子発芽液を限外濾過して得られる低分子分画からSep-pak, QMAを用いてピサチンの蓄積を阻害する活性成分を濃縮した. 更に, Avicel, TLCにより活性成分を分画した結果, Rf=0.56にニンヒドリン陽性(黄紫色)の活性部(F5と仮称した)が得られた. 本部分純化標品の塩酸加水分解物をTLC等で分析した結果, Cys,Leu,Asp,Glu,Ile,Serなどのアミノ酸およびGalかManと思われる糖が検出された. この結果から, F5はグリコペプチドであるものと推定される. F5の生物活性を調べたところ, 5ppm(蛋白換算)でエンドウのフィトアレキシン, ピサチンの蓄積を有意に抑制し, また, 100ppmでその蓄積を完全に阻害することが判明した. エンドウに病原性を持たない数種の糸状菌(Alternaria alternata,Mycosphaerella ligulicolaなど)の分生子にF5を添加してエンドウに接種すると, これら非病原菌の感染が成立した. Mpなどの病原菌由来の抵抗性誘導因子を処理されたエンドウにはピサチンとは異なる未同定の感染阻害因子(MW329)の生産が誘導されるが, F5は本物質の生産をも顕著に抑制する効果を示した. 以上の結果からは, Mpはエンドウの抵抗性を担う2つの化学障壁の生成を妨害する能力, 即ち, F5を生産・分泌する能力の獲得よってエンドウの病原体として進化して来たという仮説が導かれるであろう. 現在更にF5の精製を進めている.
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Research Products
(2 results)