Research Abstract |
昭和62年度には11県で21の栽培舎と多くの野外ほだ場, 4県の林業試験場の試験ほだ場などで, 幼生生殖タマバエおよび近縁種の発生調査を行った. その内, ナメコを栽培している長野県の4栽培舎で数年前に幼生生殖タマバエらしいものの発生があったことが分かり, それらの栽培舎からナメコの培養瓶を譲り受け, インキュベーターに保存し, 飼育を続けた結果, 1軒の栽培舎の培養瓶から, 幼生生殖タマバエの発生が確認された. 聞き取り調査によると, これら4軒の栽培舎は, いずれも, 同じ種菌業者から種菌を購入していたことが明かとなり, 種菌によるタマバエ類の伝播の可能性が強くなった. 一方, 野外のほだ場や開放状態のハウス栽培舎での調査では, 長野県や本州, 九州各県ともに幼生生殖タマバエの発生を確認することが出来なかったことから, 幼生生殖タマバエが元来わが国の山地や畑地に分布していたという可能性は低くなってきた. 長野県のナメコ栽培舎で幼生生殖タマバエの成虫の死骸が天井の蛍光灯で採集されたことから, このタマバエの走光性の実験を行った. 成虫は明らかに正の走光性があり, 素早く光に集まった. しかし, 幼虫には走光性や定位運動性も認められず, また, 1分間の移動距離も10mm内外であった. これらの結果は, 栽培舎内で光による成虫の防除が可能であることと, 幼虫の移動性が低いことから, 加害を受けた栽培瓶を早期に発見することによって, 幼生生殖で大量に増殖する前に, 被害の拡散を防げることを示唆している. なお, 顕微鏡にセットしたビデオカメラによって, 幼生生殖の現場を撮影, 録画することに成功した. この特異な生殖方法を撮影したのはわが国では初めてのことで, 幼生生殖の研究のみならず生物学一般の教育資料としても活用できる.
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