Research Abstract |
本研究はリシンの毒性発現過程におけるリシン分子のエンドソーム膜透過機構の解明を目的としたもので, 本年度は以下の成果を得た. 1.リシンA鎖及びB鎖の脂質二重膜に対する結合侵入部位の検索 A鎖及びB鎖とジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)-リポソームとの複合体を静置下20°Cでトリプシン消化後, 残存するペプチドをSDS-尿素-PAGEで解析した結果, A鎖では9,000, 7,200, 5,800, 及び3, 500の4本のバンドが, B鎖では分子量11,500と8,600の2本のバンドを得た. これらを界面活性剤存在下, FPLCで分離した結果, B鎖ではSer-103〜Lys-168とSer-103〜Arg-187が得られ, この領域が脂質二重膜内に侵入することがわかった. また, A鎖ではペプチドの回収率が悪く, N-末端アミノ酸としてIle-1, Phe-57, Glu-135及びPhe-181が同定されたに過ぎなかった. 一方, A鎖-リポソーム複合体を攪拌下30°Cでトリプシン消化した結果, 分子量3,200と2, 700の2本のバンドが得られ, それぞれGlu-135〜Arg-166とPhe-57〜Arg-85と同定され, この領域が脂質二重膜内に侵入することがわかった. また, A鎖のN-末端とC-末端領域は脂質二重膜に結合することが示唆された. 2.リシンA鎖及びB鎖の脂質二重膜への結合に対する脂質組成の影響 種々の組成からなるリポソームに対するA鎖及びB鎖の結合について調べた結果, いずれもセチルアミン及びジセチルリン酸(DPC)など荷電を有するリポソーム, コレステロール(CHOL)含有リポソーム, 卵レシチンからなるリポソーム, 赤血球膜脂質からなるリポソームに対して結合することがわかった. また, 両鎖のDPPC-リポソームへの結合に対するCHOLの影響について調べた結果, 両鎖の結合はCHOL含量5%で一旦上昇し, 10%以上の添加ではCHOL含量に比例して著しく減少することがわかった.
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