1987 Fiscal Year Annual Research Report
細胞融合法による高い木材腐朽能を持つ担子菌の育種に関する研究
Project/Area Number |
62560110
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
桑原 正章 香川大学, 農学部, 教授 (40035978)
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Keywords | 担子菌のプロトプラスト融合 / phanerochaete chrysosporium / 木材腐朽菌 / 細胞融合 / 担子菌 / リグニン分解菌 |
Research Abstract |
本年度はリグニン分解性担子菌Phanerochaete chrysosporiumを対象とし, 遺伝的マーカーの付与, プロトプラストの調製・再生条件とプロトプラスト融合条件の設定, 融合の確認法などについて検討を行い, 次の成果を得た. まず遺伝的マーカーとして, 本菌の分生子をUV照射することによりパーオキシダーゼ欠損株(POD^-)を誘導した他, ニコチン酸(Nic^-), ロイシン(Leu^-), メチオニン(Met^-)などの栄養要求株を用いた. 次にこの菌のプロトプラスト化の条件を検討した. 分生子の2日間培養後の菌体を磨砕により断片化し, これをグルコースーペプトン培地で20時間静置培養した菌糸について, ノボザイム234-セルラーゼオノヅカRS混合酵素を0.6M硫酸マグネシウム存在下で処理した場合に最も高いプロトプラストの生成が得られた. プロトプラストはガラス繊維ろ過および遠心分離により精製した. プロトプラストは再生培地に混じ, 28°Cに7日間保持することにより再生した. 再生率は約5%であった. プロトプラストの融合はPEG-8000(30%)および塩化カルシウムの存在下で観察された. 電気パルスも融合に有効であった. Nic^-とLeu^-のプロトプラストをPEG法により融合し, 最少培地で再生させたところ, 栄養要求性を示さないコロニーが生じたことから, 両株の融合が確認された. 他の要求株の融合も同様に確認された. さらにNic^-とPOD^-を融合処理し, 再生させたところ, 最少培地に生育しかつパーオキシダーゼ活性の指標となる色素RBBRの脱色を示すコロニーが多数得られた. このような融合株の培養液は明らかなパーオキシダーゼ活性を示し, 培養液から調製した酵素標品のゲル電気泳動によっても本酵素の生産が示された. 以上により両株の融合が確認された. 以上の結果は本菌においては細胞融合によって両親株の形質が発現することを示したものであり, リグニン分解能の増強への細胞融合技術の基礎となるものである.
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