1988 Fiscal Year Annual Research Report
合成ペプチドを用いた食品抗原のエピトープ構造の解析
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62560115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野川 修一 東京大学, 農学部, 助教授 (50011945)
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Keywords | モノクローナル抗体 / β-ガゼイン / 抗原抗体反応 / ELISA / NMR |
Research Abstract |
抗原抗体反応は複雑かつ特異的な免疫系における極めて重要なプロセスである。今年度は牛乳アレルギーの原因物質の一つであり、溶液中で特定の高次構造をとらないβ-ガゼイン(β-CN)を抗原として、それに対するモノクローナル抗体(MAblC3)を抗体として例にとり、その抗原抗体反応を3種類の異なる方法を併用して分子レベルで詳細に解析した。このMAblC3はβ-CNの184-202と結合することが既に明らかにされているが、まず最初にこの部位に相当するさまざまなペプチドあるいは一部のアミノ酸残基を置換したペプチドを酵素分解および化学合成により調整し、それらとMAblC3との反応をELISAにより解析した。その結果、β-CNの193-202がMAblC3と強い結合性を示し、その結合には^<194>Gln、^<200>Pro、^<202>Argが大きく関与し、^<193>Tyr、^<201>Valの関与は小さいことが示された。次に抗原分子における抗体が結合した部位の周囲は酵素分解を受けにくいと考えられるため、β-CNあるいはβ-CNの184-202とMAblC3を混合した系に各種プロテアーゼを作用させ、その分解特性より抗原抗体反応の解析を試みた。その結果、酵素作用が特異抗体の結合により阻害された部位は^<191>Len-^<192>Leu、^<194>Gln-^<195>Gln、^<200>Pro-^<201>Val、^<201>Val-┣D1202Arg、┣D1202Arg-┣D1203┫D1Glyであり、これらの部位は特異抗体との結合に関与すると考えられた。この結果はELISAによる解析結果と大きく矛盾するものではなかった。NMRは溶液中の分子の構造解析に有用な情報を与えるものであるが、最後にこのNMRを用いてMAblC3とβ-CNとの反応について検討した。その結果、β-CNの193-202の┣D11┫D1H-スペクトルについてほぼ完全にその帰属を決定した。また抗原と抗体の混合物の┣D11┫D1H-スペクトルから、抗原が抗体に一様に結合していることや結合状態と解離状態間での化学交換が遅いことが明らかとなった。以上の結果から、抗原抗体反応の詳細な解析には今回用いた手法の併用が有効であることが示された。
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Research Products
(1 results)