1987 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下における食品機能高分子のゲル化機構に関する基礎的研究とその利用
Project/Area Number |
62560123
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
月向 邦彦 名古屋大学, 農学部, 助教授 (10023467)
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Keywords | ゾルーゲル転移 / ゼラチン / 圧力効果 / ゲル化機構 / 食品機能高分子 |
Research Abstract |
申請書の計画にしたがって, ゼラチンゲルの融解温度(Tm)に及ぼす圧力効果(dTm/dp)を3000気圧までの圧力範囲で測定した. (dTm/dp)は(3〜4)×10^<-3> K・cm^3/kgでゼラチン濃度(c)にはあまり依存しない. logcと1/Tmの間には良い直線関係が成立し, その傾きとClausius-Claeeyronの式よりゲル→ゾル転移に伴うエンタルピー変化(△H), エントロピー変化(△S), 体積変化(△V)を求めた結果, これらの3つのパラメーターはともに正の値であることがわかった. この結果は, コラーゲンの熱安定性が加圧とともに上昇するというこれまでの結果(Gekko & Koga;Agric.Biol Chem.,45 1027(1983))からも予測されることであるが, helix→coil転移に伴って水和量は増加するにもかかわらず, △V>0となる点は興味深い. TmはNaclの添加により減少するが, その効果は高圧下でもほとんど変化していない. また, 加圧下ではゲル形成の速度過程は抑制されており, その活性化体積は正であることがわかった. これらの結果から, ゾル状態から活性化状態までの過程では, ゼラチン分子間接触による脱水和が主として関与しており, ゲル状態では3本らせんhelix構造が一部形成され, 分子間に水を介した水素結合が形成されるものと考えられた. これらの結果について現在, 論文を作成中である. また, 寒天ゲルについてもゼラチンの場合と同様の実験を試み, 高圧下ではゲルの融解温度が上昇することを見出した. しかし, 寒天ゲルの融解はゼラチンほど温度, 圧力変化に対して鋭敏でなく, 現在, 正確なTm-Pダイアグラムを得るまでには至っていない. 今後, 低分子量, 低濃度の試料を用いてこの問題を解決したい.
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