Research Abstract |
1.ヒシ澱粉, 元来野生で, 現在は佐賀地方の休耕田で栽培されているヒシの種実から澱粉を調製し, 分子構造と諸性質を詳細に検討した. アミロース, アミロペクチン, 澱粉のヨウ素結合量から得られた澱粉のアミロース含量は23%, 澱粉のリン含量は30ppm, 6位のエステル化リンは18ppmであった. 澱粉粒の結晶型はC型で, 6%のアミログラムの最高粘度は310で, 低く, 加熱によるブレイクダウンは認められず, 安定した粘度を示した. ホトペーストグラフによる糊化開始温度は61°Cであった. 糊液の老化性は, アミロース成分の老化性が大きいことが特徴であった. グルコアミラーゼとα-アミラーゼによる澱粉粒の被消化性は, イモ類と穀類澱粉の中間であった. アミロース成分の数平均と重量平均の重合度は, それぞれ800と4210で, HPLCによるゲル濾過では, 3成分から成る幅広い分布を示した. アミロースのβ-アミラーゼ分解限度は95%で, 非常に高く, 直鎖分子は全アミロースの89%(モル%)であった. 分子量の小さい, 直鎖成分の多いことが特徴で, これが老化性の高い原因であると考えられる. アミロペクチン成分は, ヨウ素結合量が0.41, 数平均鎖長が22, 平均外部鎖長が15, 数平均重合度は12600であった. 全リン酸含量が44ppmで, その54%がグルコースの6位に結合した. 以上の結果は, ヒシの澱粉はアミロースの構造が特徴的であることが明らかにされた. 2.山の芋澱粉, 本邦および東南原産で, 鹿児島大学農学部附属農場で栽培された山の芋15種の澱粉について, 若干の性質を予備的に検討した. すなわち, 結晶型はB型のものが大部分で, C_6型のものも小数見出された. 糊化温度は73-83°Cで, 比較的高温であった. リン含量は120-380ppmで, ジャガイモ澱粉の1/2〜1/3であった. これらの内の代表的なものについて, 次年度において, 詳細に検討する予定である.
|