Research Abstract |
1.データ整理関係 これまでに京大大型計算機に打ち込まれた森林資料を, 買い入れたパソコンに改造して移転した. さらに, 各調査地の気温資料等をデータ化して同機に入力した. 2.出張関係 これまでの資料整理から, 日本の森林帯を構成する種数, 特に常緑低木種は冬季の積雪によって低温から保護され, 特異な分布が形成される. この点を確認するために, 秋に青森営林局管内の森林を調査し, 積雪のすくない表日本では常緑低木種が少ないことを確認した. 同様の目的で冬季に福島県下の阿武隈山地の調査を行い, 同様の結果であったことを確認した. 3.とりまとめ関係 整理されたデータをもとに, 当年度は, 一定森林面積内に出現する樹木種数が, 日本列島の温度傾度に対してどのようになっているかを検討した. その結果, 一定森林面積内に出現する総ての樹木種数は, 亜寒帯から亜熱帯へと単純に増加しているのではなく, ある中間温度帯で種数最多となり, それより温暖域では種数が増加しない特徴のあることを明らかにした. この特徴は, 針葉樹種群でなく, 広葉樹種群によって形成された. 種数最多となるゾーンはブナ帯の下部で, ヤブツバキ分布帯の上部に相当していた. この構造が形成された原因として, 様々な要因を検討した結果, 日本列島という, 島として隔離された条件のもとに, 気温が変動した, いわゆる地史的要因が主要因であることを提案し, 日本生態学会誌に提出, 受理された. 現在印刷中である. 次年度は, 上記の種数分布構造が, 樹木の生活形, すなわち常緑, 落葉, 高木, 低木などの側面から調べた場合, どのようになっているかを検討し, 整理してゆきたい.
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